鳥のさえずり、布越しに瞼を突き刺す日差し。夏休みに突入して一週間も経っていないけど、今日も規則正しく、携帯のアラームと共に目が覚めた。
あくび混じりに呟くおはように、返ってくる言葉はない。両親は一昨日、長期の海外出張に出てしまったからだ。


「夏休み中はずっとあっちになるから、なまえも一緒に行かない?」


すっかり家族旅行気分の母の言葉に父も頷いてくれたけど、わたしはそれを丁重にお断りした。家族旅行と聞いてもちろん浮かれた。正直行ってみたい気持ちはあった。しかし1ヶ月近くも言葉の通じない土地へ行く不安のほうが遥かに大きかった。だって言葉が通じないとか恐すぎる。そんな不安にも全く動じない両親のハートは、きっと鋼鉄でできているに違いない。

ともあれ、夏休み中はまさかの一人暮らしだ。幸い、両親がちゃんとお金を振り込んでくれているから生活費の心配はない。ちょっと多すぎるのが気がかりではあるけど、少ないよりは全然いい。
さて、今日は何をしよう。課題もまだ残っているし、1日使って片付けてしまおうか。


「まあ、まずは朝ごはんだ」


独り言が多くなるのも、一人暮らしゆえだ。悲しくなんかないし。
のろのろと布団から出て、自室の扉を開こうとノブに手を――


「ぶぇっ!」

「……あ?」


かけたところで、ドアが自動的に開いた。
反対側から勢いよく押されたらしいドアは、わたしに見事なクリティカルヒットをかますのでした。い、痛い…。すっごい、痛い。
じんじんと痛む鼻を押さえて前方を見る。目に痛いくらいの白と、その中に目立つ赤色。


「誰だてめェ」

「こっちの台詞ですよ、この不法侵入者!」

「あァ!?」


白い髪と赤い目。およそ日本人とは思えない風貌の男の子が、こっちを見て思いっきり睨んできた。
なにこの人、超怖い。



   
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