「お前今日何日だと思ってんの」
仏頂面で言い放った宮地先輩に、わたしははて、と首を捻った。
何の日。答えは簡単、土曜日だ。休みの日まで練習練習とは、本当にバスケ部の練習の多さには頭が下がる。
「ど」
「――ようび、って言ったらキル」
「それどっちですか!?日本語ですか!?」
激しく日本語希望!いや日本語でもえらく物騒には変わりはないけれど。
じゃあなんだなんなんだ。今日なにかあったっけ。やばい本当に思い出せない。
宮地先輩の誕生日…は違うよねかなり前に過ぎたよね。
たしか高尾と誕生日が近くてなんやかんや盛り上がったハズ……って高尾発見。
水でも飲みに来たのか、偶然にも近くを通りがかった高尾に、わたしは躊躇なく声を上げた。
「高尾ー!今日は何の日!?」
「あっおま、」
「バレンタインデー!の翌日っ!」
「…………あっ」
「センパイなんでチョコとかくれないんすか?手作りNG?」
「なに堂々と言い放ってんの失礼だな!家庭科は人並だよ!」
「じゃあ下さいよセイシュンしてる俺らに!」
「忘れてたんだよごめ、ん。……ほんと、すみませんでした」
折り目正しく頭を下げるその上から、「あーあ、俺しーらね」と小さく面白がる声が聞こえたけれど無視だ無視。遠ざかってく感じがしたから、きっと用事を済ませに行ったに違いない。なんて薄情な
わたしが頭を下げるその先にいるのはもちろん宮地先輩で。
頭をあげたらきっとどす黒い笑顔が待っているのだろう。……ううう、いやだ頭あげたくない。
なぜなら、
「お前さぁ…ほんとお前さぁ……」
心底ガッカリ、そんな声が降ってきた。あああほんとスミマセンスミマセン!
桐皇のあの男の子を頭に思い浮かべ、平身低頭。
『わたし料理得意なんですよー!え、バレンタイン?いやぁもうよゆーで宮地先輩にすらおいしいって言わせる自信がありますね!』
ああ、あの頃(約1か月前)のわたしは調子に乗りすぎていた。
そのくせ忘れるとか。バカか。
「ま、どうせそんな事だろうと思ったけどな。…ほらよ」
「いたっ、……え、」
頭に降ってきた軽い衝撃。パコン、びっくりして頭を上げると、目の前にはチョコレートの箱があった。コンビニのお菓子コーナーにある120円くらいの奴だけど。
……いやいや値段は問題じゃない。そう、問題は、これをわたしに向けた宮地先輩の心理である。
期待しちゃってもいいですか?
「期待してっから」
「え!」
「3月14日」
「三倍返し要求されてる!」
「……(卒業式の後に会うってのはスルーか)」