「こ、これでどうですか…?」
「あー、見えてる。ホラこっち」
「えっあ!?……ぅうー、なんでぇええ?」
「ハハハ、頑張れみょうじ。リトライしよう」
最近、みょうじさんと伊月先輩の仲が良い。
仲が良い事は構いません、むしろ喜ばしいことだと思います。けど、問題はその親密さです。
「黒子」
「あ、く、黒子くん」
「お二人揃って、どうしたんですか?」
「ちょっと立ち話してたんだ、なっみょうじ?」
「は、はい。ちょっと次の練習試合のこととか相談してて…」
この半月、二人はこっそりと何かをしています。それが何かは頑なに秘されているためわからないのですが、だからこそ僕は不安になっていました。親密に見える二人に、焦っていたんです。
……え?ミスディレクションで探ればって?そんなの最初に試みたに決まってるじゃないですか。でも相手は『鷲の目』を持った伊月先輩ですから。まあ、すぐバレましたよね。
声をかけてもなんだか微妙にはぐらかすような返答しかもらえなくて、「ああ僕の片想い終了のお知らせですかね」なんて悲嘆に暮れていた訳です。
「…………お前、みょうじの事が好きだったのか」
「今更ですね火神君」
「つーかそれこそ今更じゃねーの?」
「なにがですか、どういう意味ですかそれ」
「は?」
「く、黒子くんっ…!」
今更ってなんだろう、僕が彼女を好きだと言うことか、それともみょうじさんたちの仲の良さを言っているんだろうか。問い詰めようと火神君に一歩にじり寄ると、それを遮るようなタイミングで声をかけられた。誰かは見なくてもわかります。
「あ、あのね、ちょっとだけ時間あるかな?」
そわそわと落ち着きを失ったみょうじさんも可愛いな、と思いながら「大丈夫ですよ、どこか場所を変えますか?」とできる限りいつも通りの対応を心がける。そうしないと、頬が緩んでしまいそうでした。だって影の薄い僕を意識して探して、見つけるのは至難の技でしょう。そんな努力をしてまで僕を探してくれるなんて、嬉しくないはずがありません。
火神くんは何か用事を思い出したのか、それともお腹が空いて購買にでも行くんでしょうか、彼女と入れ違いに席を立ってしまいました。
「あ、えっと、ここで大丈夫だよ!……黒子くん!」
「っ、はい」
「好きです!…………あっ」
ぽん、と可愛らしく何かが弾ける音と共に、みょうじさんの空っぽだった手の平にはラッピングされた箱が現れた。しかも色とりどりの紙吹雪のおまけ付き。
と、いうよりも。彼女の言葉……え、あの。
びっくりして二の句が告げないでいると、なにやら彼女も慌てて顔を真っ赤にしていました。
「あ、いや、その、……お、お誕生日おめでとう」
「え?」
「黒子くんの特技が手品だって聞いて、だから、その……びっくりさせようと思って」
「びっくりしました。…嬉しいです、ありがとうございます」
プレゼントを受けとると、彼女はほっとしたのかふわりと笑みを浮かべた。「黒子くんには当日まで秘密にしたかったから、伊月先輩に頼んで練習に付き合ってもらったんだよ」という一言によって、僕の疑問も解消され、まだ彼女を諦めなくてもいいんだと安心して。
――そこで、ひとつの疑問が残りました。
「……みょうじさん」
「ん、なに?」
「最初にプレゼントをくれたときの言葉なんですけど」
僕の言葉が言い終わらないうちから、彼女は俯いてしまうけど、髪の毛に隠れきれてない耳が真っ赤になっていて、みょうじさんがどんな表情をしているか、手にとるようにわかってしまった。
「もし、あの時出た言葉がただの言い間違いではないなら、……もうひとつ、プレゼントを貰えませんか?」
「え?」
「僕はみょうじさんが好きです」
告白の返事を、聞かせてください。
臆病な僕が、導き出したひとつの未来