∠設定
帝光→秀徳
嫌われ要素は帝光時代だけ。

メインは「共依存していると思い込んでいる緑間と、依存されながらそれを許容している夢主」と、「共依存から変化するふたり」です。

∠残念なオリキャラちゃん
嫌われにありがちなテンプレート系ぶりっこ。一軍マネージャー。
夢主を追い落とし、さらに桃井に取り入ることでキセキの世代とお近づきになることを目論んでいた。

∠以下、導入部分



パシン、と乾いた音と、甲高い悲鳴。
その意図に気がついたのは、血色の良い唇が「あんたなんかいなくなれ」と笑みの形を消し去ってからだった。


「なんスか、今の音!?」

「き、黄瀬クンっ!」


わたしの横をすり抜けて、華奢なからだは黄瀬くんに抱きついた。驚きながらも抱き留めた彼は、訳がわからないままに彼女の顔を覗き込んで、そして表情を凍りつかせる。
黄瀬くんに続いて入ってくるのは、緑間くんと赤司くん。次いで紫原くんが。
さつきと黒子くん、それから青峰くんがいない事を疑問に思う前に、全ての視線は一斉に彼女に注がれていた。


「ちょ、どうしたんスかそのほっぺ!真っ赤っスよ!?」

「あ、アタシ、黄瀬クンの、ろ、ロッカー、開け、ちゃダメって…そしっ、そしたら、うるさいって!」

「…え、え?オレの、ロッカー?」


泣きじゃくりながら、要領を得ない説明をして。しっかりとわたしを指で示す。それだけで、きっと大体の人間が彼女の言葉から導き出す結論は決まりきっている。


「黄瀬のロッカーを物色し、それを止めたところ殴られたという事か?」


赤司くんの口調は質問の体をしていたけれど、もはや断言と言っても良いくらいで。その言葉に、頷く彼女の姿に、みんなの視線が険を帯びるのがわかって。強烈な悪意に、からだがぎしりと強張った。


「サイテーっスね。……信じてたのに」

「ちが、」

「今ならちゃんと話せば大事にはしない。黄瀬に謝って、二度としないと約束すれば、それで終わりにするのだよ」

「違うの」


違う。わたしは、そんな事してない。黄瀬くんと緑間くんの眼が、侮蔑の色を乗せてわたしを映している。泣き声は、止んでいた。
ねぇ、どうして信じてくれないの。黄瀬くんのロッカーはずっと離れたところにあるのに。彼女の腫れた頬は右側で、わたしの利き手は右で、咄嗟に叩くには無理があるのに。
わたしは、ただみんなのバスケをサポートしていたいだけなのに。


「何が違うのだよ、いい加減にしろ!」

「だって、わたしそんな事してない!してないよ!」



その瞬間、右の頬が熱を持って熱くなった。叩かれた、右頬に触れるとジリジリと痛くて、緑間くんは衝動的に手を上げてしまったのだろう。それでも無意識に手加減をしたのか、拳ではなく平手だったし、わたしは吹き飛ばされる事もなく、ただ突っ立っている。
もう、何を言っても信じてはもらえない。鼻の奥がツンと痛み、目がひどく熱くて。瞬きをして必死にやりすごした。


「……全員、落ち着け」


赤司くんの凛とした声が、その部屋に響き渡る。たったそれだけで、騒がしかった場が水を打ったように静まり返った。


「状況証拠のみの現状に、結論を出すのは性急すぎる。ましてや今は全中の直前だ」


そう、彼らにとって最後の全中が、すぐそこへと迫っている。今何か問題を起こすのは大会への出場に関わってくる。赤司くんはそれを危惧していた。こんなくだらない諍いが彼らからバスケを奪う……わたしが、その原因になってしまう。そんなのは絶対に、嫌だ。
何か言いたげな黄瀬くんを目で制した赤司くんは、その瞳でわたしを見つめる。嫌悪もなにも読めない視線がわたしを射抜いた。


「全中が終了するまで、休部扱いで待機。結論はそれからだ。異論は?」

「…ありません」


だって、きっとわたしの言葉は誰にも届かないでしょう。
鞄だけを掴んで、ドアを開ける。涙は出なかった。


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ここだけ書くとホントただの嫌われですね






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