※壁ドンに至らない




「は、……○○っ」


息を乱して、和成がわたしの名前を呼んだ。こめかみを伝う汗も、乱れた前髪も荒く息を吐き出す唇も全部がいやらしくて、目が離せない。
ただただ見上げるばかりのわたしの頬に、和成の熱い掌がそっと触れた。同時にぐっと近づいた和成の瞳は鋭くて、すべてを見透かされてしまいそうだ。更に距離を縮めた彼に思わずぎゅっと目を閉じれば、






わたしの意識は現実に引き戻された。


「…………さ、」


最低だ…!朝っぱらから大きな声を出すわけにもいかず、わたしは静かに頭を抱えて撃沈する。思春期の男子かわたしは…!死ぬほど恥ずかしい。熱を持った頬をシーツに押しつけて襲い来る羞恥心に項垂れていると、


「……んん、」

「…っ!」


もそもそと動いた気配に、わたしのからだが強張った。ビビりながらも目を向けると、そこには和成の寝顔があった。どうやらまだ夢の中にいるようで、規則正しく胸の辺りが上下している。
向かい合って眠っていたからか、和成の腕は抱き枕よろしくわたしをすっぽり包み込んでいた。まさかこれか…夢の原因。これなのか。
ああもう、なんであんな…あんな夢…!目を閉じると途端に思い出してしまうので、目だけは閉じないでいる。けれど目の前ですやすやと眠っている本人の顔を見るのはもっと無理で、わたしは和成のシャツを恨みがましく見つめるしかなかった。ていうかなんで一緒に寝てんだよ来客用の布団用意したじゃんと思ったが、枕元に転がるふたつのDSを見て思い出した。そうだ対 戦してるうちにわたしが寝落ちしたんだった。壁際にいた和成はたぶん抜け出せなくてそのまま寝てしまったんだろう。……完全に自業自得でしたどうもありがとうございます。
もしかして、腕を回してくれたのも、わたしがベッドから落っこちたりしないようにっていう気遣いなのかもしれない。ごめんなさい高尾和成くん。わたしはどうしようもない愚か者です。
自己嫌悪に、頭の中がぐるぐるする。これ以上ないってくらい落ち込んでいると、ぐ、と頭を引き寄せられた。


「……おぁよ」

「お、はよ」


半分寝ぼけたままの和成は、あくびをひとつこぼすと引き寄せたわたしの頭を抱え直す。もう少し眠るつもりなのか、もぞもぞと寝心地の良い体勢を探していた。





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