触れて、離れて。また触れて。
そうやって何度も唇を触れ合わせる和成はひどく楽しそうにしている。
反対にわたしは緊張でがちがちになっていて。両手で包まれた頬が、触れ合うだけの唇が、縋りついた腕が、ぜんぶぜんぶ熱くて、このまま体中の水分が蒸発して消えてしまうんじゃないかと錯覚してしまう。
満足したのか、最後にわざとらしいくらいにリップノイズを響かせて、和成はわたしを覗き込んだ。こつん、と額を合わせられて、何もかもを見透かすような瞳にじっと見られてしまえばわたしに逃れる術はない。逸らすことさえできないその眼光に、目眩がした。


「緊張してんの?顔真っ赤じゃん、かわいーけど」

「うっさい、息、させて、ばか」

「いやなのだよ」

「しね」

「ひっでぇー!」


けたけたと笑いながら、息切れをおこすわたしの頭をよしよしと軽くなでて、そのまますっぽりと包みこんでしまう。応えるようにぎゅうっとしがみつくと、和成がくつくつと笑って、喉が震えた。
好きだ。和成の、低くて優しい声が好き。少しかたいてのひらが好き。バスケをしている時の、鋭い視線が好き。ぎゅっと包み込んでくれる、あったかい腕が好き。
声に出さずに「すき」だと呟く。聞こえないはずのそれに応えるように、抱きしめる力が強くなったのは、きっと偶然ではないのだろう。


「和成」

「んー?」


服の裾を引っ張って、ほんの少しだけからだを離す。ニヤニヤしている和成の肩に手を乗せて、身を乗り出すようにして唇を重ねた。





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