どういう事だ。
吐き出された声色は恐ろしく低いもので、○○はびくんと肩を跳ねさせる。
背中を壁にぴったりと付けた格好で、顔のすぐ横には逃がさないと言わんばかりに緑間が手を付いていた。


「……高尾の事が好きなのか」

「…………っ」


否定の言葉は出なかった。本当はいつでも拒否できたはずだ。それでも関係を続けていたのは、高尾のくれる優しい言葉に甘えていたからだ。そっと触れる手が、心地良かったからだ。
緑間が好き。しかし緑間を裏切ったのは、他でもない自分だ。言い訳はできなかった。

何も言わない様子を肯定と捉えて、緑間の表情が苦渋に満ちた。壁についた右手を離し、その指は○○の頬を優しく滑る。今まで、手を繋ごうとさえしなかった緑間の行動に不安を覚えた○○はおそるおそる顔を上げて、そして後悔した。
例え、○○が高尾のことを好きだと言っても。


「悪いが、俺は好きな女を他の奴に譲ってやれるほど、寛容な男ではないのだよ」

「み、どりま、くん」


高尾には、渡さない。
切なげに歪む瞳も、小さな手が自分の制服の裾を控えめに掴むのも全部無視して、その唇に噛みついた。
うまく呼吸ができないらしい○○の、くぐもった声が直接鼓膜を刺激する。僅かな罪悪感が緑間の胸を刺したが、捨てた理性をもう一度拾い上げる気は、ない。酸素を求めて開いた隙間も埋めてしまって、行き場をなくしたように震える、自分のそれよりも一回り以上小さな手と指を絡めた。躊躇いがちに、それでも応えるように握り返されるのを感じて頭の芯がぼうっと熱を孕む。


「……悪いが、手放すつもりなど、ないのだよ」


○○の肩に、緑間は背をかがめて額を押し当てる。細くて頼りない、小さな体だと思った。



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私の語彙力が限界です





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