※高尾視点


「……失礼します」


一礼してバタバタと走り去る後ろ姿は、声をかける暇さえ与えてくれなかった。忘れ物を届けに来てくれた、緑間の妹ちゃん。
年下だけどしっかりしてて、下まつげが長い目許なんかは緑間にそっくりな女の子は、なんでか兄である真ちゃんを見た途端に、その動作をぎこちなくさせた。

……え、なんでそんな他人みたいによそよそしいわけ?ていうか妹ちゃん、ほんのちょっとだけど顔強張ってたよな。なんて、鋭いオレの観察眼は遺憾なくその実力を発揮した。


「真ちゃんと妹ちゃん、あんま仲良くねーの?」

「知らないのだよ」

「オイ」


それとなく探ったとしてもどうせ鋭いウチのエース様には見破られちまうので、そのものズバリと聞いてみたら、そんな一言で切り捨てられた。
ていうか、なんでそんな他人事みたいな答えなんだよ、自分の事だぞ!思わず声が低くなったけどオレは悪くない。


「……アイツの事なんて、オレが知るわけないのだよ」

「おいおい真ちゃん、いくらなんでもそりゃねーだろ」


つんけんしてる緑間の雰囲気を変えてやろうとわざとらしく明るい声を作ってバシバシと肩を叩く。そうすれば怒りの矛先はとりあえず変わるから、それでなんとかこの場を取り繕うくらいはできると思って。
でも、緑間はいつもみたいに怒ったりしなかった。右手で、ずれてもいない眼鏡のブリッジを押し上げる。……だいたいそうする時は、顔か感情か、なにかしらを隠そうとしてる。緑間の癖はわかりやすい。


「アイツが勝手に変わっただけだ。オレは何もしていない」

「変わったって…何かきっかけとかなかったのかよ。つーかいつから?」

「オレが中三になって、少し経った辺りだな。それまでは、まあ普通の兄妹だった」





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時間きた!行ってきます!






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