仲良くなるきっかけ

同じクラスの成宮くん。
2年連続甲子園に行って、今年は準優勝という成績を残した野球部のエース。
テレビでは、都のプリンスとか言われて鳴ちゃんフィーバーなるものが起きていた。

普段、野球ばっかりしてる。
わりとフレンドリーである。
彼女いないらしい。

私が知ってる情報はこれくらいしか・・・ない。

去年、試合の応援に行ってなんて言うか一目惚れして、だけど今告白なんかしても大勢なファンの1人って思われて終わりそうだし・・つまり色々と理由つけて気持ちは伝えずに一年生が終わった。
そしたら同じクラスになれた。
ちょっとだけ話せるようになった。
それで、やっぱり気持ち伝えようと思った時にはまた夏になってて。

去年を上回る人気っぷり・・・
さすがはプリンスって感じ。
だめだ私、気持ちで負けてる

「はぁー・・・」

そんな私にもようやくチャンスが訪れた。
後期の委員会だ。
偶然、本当に偶然だけど成宮くんと一緒!
なんだかだるそうにしているけど、でも同じ委員会だなんて、これからしばらくの間は何かと話す機会が増えるって事だよね?

嬉しい・・・


「・・と言うことで、服装検査はクラス別に担当でやってもらいます」

服装検査、だるい。

「ねぇ、名字さーん」
「っ!?はっ、はいっ!」
「オイラ達、髪チェック担当だってさ」

え、髪・・・
他のクラスは一緒にならないのかな、2人だけ!?
クラス別に担当って、、打ち合わせとか2人で出来るって事だよね、嬉しい!

「オイラ達でチェックしろって事なんだよね?」
「う、うん…」
「よろしくね名字さんっ!」

緊張しつつも、なんとか笑顔で会話が出来たと思う。
そのまま向かい合って座り、服装検査の内容とかやり方とかを話し合った。

「あ!ごめん、オイラ練習に行く時間だ!」
「じゃあまた今度続き話そう?」
「うん、また今度な!」

次の話し合いの日程を決めた。
さらに、急にダメになる時があるかもしれないから連絡つくようにってラインで繋がった。
すごい!すごい!すごい!!嬉しい!!
たぶん、今の私の顔は盛大にニヤけていたと思うけれどしょうがない。だって隠せないくらいに嬉しいんだから。

それから、成宮くんとは2日に1回くらい放課後に少しだけ話した…と言っても打ち合わせだけど。
かったるい!とか言いながらちゃんと部活に行かず教室に残ってくれる成宮くん。委員会やっておかないと内申書悪く書くって脅されたんだって真面目な顔して言っていたけど、そもそもクラスの中にはやってない人もいるのに・・ひょ
っとして成宮くんは、素直すぎる人なのかも!

何回か話し合いをやっているうちに、だいぶ仲良くなってきて、最近は普通に教室でも話せるようになってきた。
そして、今日は服装検査日前の最後の話し合い。
もともとは1回で済む話し合いを、成宮くんが忙しいという理由で数回に分けていた。でも、その分仲良くもなれたと思う。

とりあえず、検査の日だけはみんなバリっと真面目な髪型になるから、それはそれで笑えるんだよね。

白河は、あれはセーフなの?ねぇどう思う?なんて真顔で言ってくる。
今じゃ、こういう冗談まじりの話もできるようになっていた。

「それじゃあ、黒板のところに立たせて、端から順番に見て行くってやり方だなー。」
「うん、その方が早そうだよね」

全校分だから、見て回るだけで疲れてしまいそう・・・だけど、成宮くんと一緒だし、楽しめたらいいな。

「まっすぐ見て行けばいいんだよね?顔は正面向いててもらってさ!ちょっと名字さん、そこ立ってくれる?」

「ここ?」「そう」

成宮くんに言われるまま、黒板のところに立った。なんだろう?と思っていると、いきなり「模擬検査ね!」とニヤリと笑った成宮くん。

「えっ!?」
「はいはいー、動かないで?」
「っ、、」
「はーい、ちゃんと正面見てね?オイラの事見てー?」
「っ…、成宮くっ・・」
「ほらぁ!動かない!」

このっ状況って・・
どうしよう、顔真っ赤になってるたぶん!!

だって成宮くんがこんな近くで笑ってる、直視出来ない!
そんなの無理だから、もごもごしていると後ろの黒板にバーンと手をつかれた。
だから、動かないでって言われても無理だからっ!!

なんで私、成宮くんに壁ドンされてんのっ!?

成宮くんが正面を…自分を見てって。
だけどこの状態で見たら、すごい至近距離だし…どうしよう息とかできない!!

「っ、、」
「ちょっとさ、目閉じて?」
「ふぇっ!?」

真剣な顔して私を見つめている成宮くんは、とうとう最終兵器とも思われる爆弾を投げてきた。
それって、、つまり・・・

「っ、、だっ、だめー!!」
「えっ?」

「成宮くんの事好きだけど!!私まだ何も伝えてないし!成宮くんから返事ももらっていないし!だからキスとかそういうのはまだっ・・・」

「は・・・はぁぁぁ!?」

成宮くんは私から逃げるように後ろに下がった

「バッ、なっ!何言ってんのっ!?オイラはただ、前髪の検査をっ!!」

「え、、前・・前髪っ!?」

私が真っ赤なのは自分でもわかる。
だけど、目の前の成宮くんも一瞬にして真っ赤になった。

「そんなっ!キッ、キスっ、とかっ!!やんないって!!」

「は…ごめんなさいっ!早とちり・・しちゃった。」

手の甲を口のあたりにあてて、顔を半分くらい隠してる成宮くん。ひどく焦っている…

「ごめんなさい・・」
「いや、別に、、いいけど・・」
「ほんとに、ごめっ・・」
「いぃーって!ほら!前髪検査!模擬検査!!」

お互い顔を赤くしたまま、成宮くんの模擬検査は行われた。

「っと、まぁこんな感じだな!」
「うん」
「じゃ、明日よろしくな!オイラ部活行くし!」
「ん、明日ね!」

明日を過ぎたら、また話さなくなってしまうのかな。ちょっと寂しいかも…

翌日、打ち合わせの甲斐あって無事に服装検査(髪型担当)は終了した。

───────

今日からもう名字さんとは話し合いとかないんだよな。ほとんど毎日しゃべっていたから、ちょっと寂しい・・

教室の反対側には、友達と話している名字さんがいた。
なんとなく、ぼんやり見つめる

っ!!オイラがキスとか!!
思い出したっ!
するわけないじゃん!!
・・・ん?

「成宮くんの事好きだけど!!まだ何も伝えてないし!」

って言ったよね?あの時。
・・・やべ、ちょっと嬉しいかも。

ニヤけ顔で部活開始。
今日もギャラリーがうるさい。

オイラの事好きなら、練習の見学に来ればいいのに・・・


────────

夜、友達とラインしていると突然別の人からメッセージ。
確認すると成宮くんだった。

え・・・何っ!?



「おーっす!今度さ、練習見に来ない?エース様が前髪検査してあげる!」

ちょっと笑えるスタンプ付きで送られてきたメッセージ。これからもっと仲良くなってもいいって事なのかな?

最後の夏が来る前に、気持ちを伝えられるように。わざと成宮くんのチェックに引っかかるのもいいかも、なんて考えてすぐに返事を送ったのだった。

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