球技大会

今日は待ちに待った球技大会だ!と朝から元気良く隣で騒いでいるのは見慣れた坊主頭が特徴の三島くん。そんな輝いている彼を見ているだけで何だか球技大会が楽しいものだと思えてきた。そう、思えてきただけで。実際は、


「所属部活の競技に出られないなんてどう言う事なのかなぁ…」



私のちっぽけな呟きは隣で未だ騒いでいる三島くんの大声に綺麗に掻き消された。彼はどうやらキャッチャーだけ、と言う約束の元で野球に出られるのだそうだ。何て運の良いやつ。秋葉くんとのじゃけんけんに勝てたのが余程嬉しかったと見える。羨ましい。恨めいた目で三島くんを睨んでいると横に居た秋葉くんと目があった。



「まぁ、うるさい三島はほっといて」
「だね、ほっといて」
「名字は何の競技に出るんだ?」
「…………男女混合二人三脚」
「……何その"球技"大会無視した種目は」
「わたしもびっくりだよ本当」



おおよそ球技大会に相応しくない種目に出る私の気持ちはずぶずぶと沼に填るように沈んで行く。隣で自慢気にグローブ磨いてる坊主頭が無性に腹立たしい。それは秋葉くんも同じだったのか丸められた(勿論三島くんの)教科書で頭叩いてた。いいぞ、もっとやれ。



「ところで秋葉くんは何に出るの?」
「俺?バレーだよ」
「いいなぁ、球技じゃないの」
「名字は球技ですらねぇもんな!」



ザマァねえな!、何て上から目線な態度なんだこいつ。キャッチャーで出れるだけで打たせてもらえないくせに!どうせ頼み込んだら打たせてもらえるとでも思ってんだろこの坊主め。これ以上三島くんと話していたら球技大会への気持ちが冷めてしまう。実際はもう冷めかけているのだけど、それでも運動する事は好きだから文句はない。そうだこれは苦情だ。クレームだ。それも正当なやつ。





「えーっと、轟くん?」
「 ! 」
「(顔真っ赤だなぁ…)」



私たちのクラスは割合的に文化部が多いものの意外に強かった。つまりどの競技も男女共順調に勝ち進んでいると言う事で、球技大会なのに二人三脚と言うふざけた種目の応援には数少ない程の人数しか集まらなかった。これはこれで悲しいが種目的には盛り上がっているようだ。まぁ…男女混合二人三脚だしね、盛り上がるだろうよ。隣で赤面している彼は轟雷市くん、だったはず。と言うのも私は彼の事を直接知っている訳ではなく、秋葉くんや三島くんなど同じクラスの野球部の子がよく「雷市雷市」言うもんだからフルネームを知っているだけで話したり顔合わせたりするのはこれが初めてだったりする。クラスメイトなのに顔合わせ初めてってのは何かあれだけどしょうがない。私も、きっと彼も人付き合いは苦手な方なのだ。



「その、二人三脚の相手、よろしくね」
「お、おう!カハハハ!」


やっぱり人見知りなのかな?まだ赤い顔でちらちらと見られる限りそんな気がする。寄せ集めの二人三脚メンバーは適当に振り分けられ4つのチームになった。そこから男女で二人三脚するわけだが…。応援は少ないくせにギャラリーだけは一丁前に多い。もう一度言おう、これは男女混合二人三脚だからだ。…憎い、球技に飢えた私をこんな種目にぶち込んだ実行委員の友人が。でも勝ったらクラスに点が入るらしいので頑張って損はないみたいだ。そう思うと少しだけ楽しめそう。…少しだけ。



「よし!いっちょ派手にやりますか。轟くん、はい」
「 ? 」
「飴なんだけど…いる?バナナ味の」
「いる!!!」
「わっ、びっくりした…!」



いつも持っているバナナ味の飴を轟くんに渡せば眩しいくらいの笑顔を返してくれた。わっ、きれいなえがお。素直にそう思った。この暑さも、球技大会に対する思いも全て吹っ飛んで行きそうなきらきらした笑顔。つられて私も笑顔で返すと轟くんは初めて会った時と同じくらい真っ赤になった。なんでだろう…轟くんの表情ってつられちゃう。多分赤くなっているであろう顔を冷ます為に手を動かした。



「よ、よし!行こうか、轟くん!」
「カハハハ!暴れるぞー!」



この素晴らしき日に笑顔を!

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