別れ際の秘密のキス

青道高校野球部は、何故だか知らないが恋愛禁止ならしい。
それは、別に決まり事ではないようだが、選手たちはそれを守っているようだ。
だがしかし、私の彼は違った。
そう、降谷暁である。
暁と私は秘密の関係になっているのだ。

だから、我慢しなければいけないことも多いんです。


*


「へぇ、沢村君って面白いね」

「面白いっていう区域超えてるけれどね」
小湊君と隣のクラスの沢村君の話をしている最中である。
隣では暁が読書中だ。


「今度、紹介するよ。
 あ、今日の放課後部活ないから来なよ。
 あ、何もなければだけれど」
小湊君は気を使って、チラリと暁の方へと視線を向ける。
私と暁の関係を唯一知っている人物。小湊君。
だから、色々相談に乗ってもらっている。

「大丈夫だよ! なにもないし
 行くよ」
私はそう言って、その場を去った。

こういう関係、本当に良いのだろうか。
ばれないだろうか。
なんていう自問自答を繰り返して、授業に取り組み、放課後になってしまった。
本当、時間が経つのは早い。

「名字、行こうよ」
小湊君はグイッと暁の腕を引っ張りながら言う。
暁は眠そうだった。

「……ゴメンね、私用事思い出しちゃったんだ。
 また誘って」
暁はきっと、疲れているんだ。
休ませるために、行かないようにしなきゃ。と私は思い、嘘をつく。


「そっか、残念。
 また機会があったら誘うね」

「うん、ありがとう。
 小湊君。じゃあね」
私は手をサッサと振り、教室から出ていく。

しかたない。
分かっていたことでしょう?
野球部の、しかもエースの人の彼女になるためにはそれなりのがまんが必要だって。
なのに、何で?

「……わかってなかった」
眼から変な液体が流れてきた。
裏庭に走って、誰にも見つからないように涙を流す。

久々に泣いた。
こんなんで泣いてちゃ、駄目だなぁ。

「名前」
暁は私の居場所を簡単に見つけてしまったようだ。
あぁ、心配かけさせちゃうよ。


「な、何でも無いよ!
 これ、お芝居だから」

「こっち向いて」
暁の真剣な声。
私は意を決して、暁の方へ向く。

唇が重なる。

耳には、キャーキャーと話をする女子、男子の声。
部活動を感じさせられる音。
でも、時がとまってように思えた。

「ココだったら、誰にも見られない」
暁はそう言って、涙を拭ってくれた。


「先輩たちもココ、使うんだって。
 大丈夫だよ。バレテも何もなんないよ」
暁は何でもお見通しだった。
隠す必要なんて無かったのだ。


「もう一回良い?」
暁は私の返事を聴かずに唇を重ねた。

秘密のキスは、ちょっぴり涙の味がした。
けれど、嬉しい気持ちでいっぱいだった。

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