今日は少し時間が余ってしまいましたね。すみません。何か話をしてほしい? そういわれると難しいですね。それでは、今日は僕の初恋の話をしましょうか。バスケ部に所属している皆さんは僕の中学や高校時代のことのほうが聞きたいこともあるでしょうが。連絡? ああ、彼らとは今でも連絡は取り合っています。え? そっちじゃない? ああすみません。彼女のアドレスは知りません。今どこで何をしているのかも、残念ながら僕は知りません。ありえない、ですか。今は携帯が主流の社会ですからね。でもその時の僕は、アドレスを交換してほしいなんていう勇気はなかったでしょうね。……かわいいですか。ありがとうございます、と言うべきなんでしょうか。

 本題に入ると、僕の初恋は中学一年生の時でした。遅いですか? 確かに最近の皆さんは小学校の時から彼氏彼女がいるというのが普通ですからね。来月で四年目ですか? それはおめでとうございます。結婚式の折には、是非招待していただきたいものですね。
 僕と彼女……ここではsheの意味での彼女ですが、クラスは違いましたが委員が同じでした。図書委員です。僕は昔から本が好きで、彼女もまたとても本が好きな方でした。目立つ方ではなかったんですけど、とても可愛らしい方で、また真面目な方でした。毎週水曜日の昼休みに図書委員があって、といっても内容自体は返却された本を片付けたり整理したりと単純な内容だったんですが、それに毎週参加しているのは彼女だけでした。
 いつから好きだったのか? 少し記憶がおぼろげなんですが、夏にはすでに気になってはいたんじゃないでしょうか。口笛ありがとうございます。お上手ですね。
 というのも、皆さんご存知の通り、僕は帝光中学校のバスケ部に入部していました。ですが僕はなかなか二軍にすら上がることもできなくて、バスケをするのが苦痛に感じることもありました。ちなみに皆さんが知っているような方達は最初のテストから一軍メンバーでした。さすがですね。仲がよかったのか? まあ、それなりには。

 本題に戻りますが、図書委員には『図書委員ノート』という活動記のようなものがありまして、最初の方こそ使われてはいたんですが、だんだんノートが使われることもなくなってきまして。まあ毎回シンプルな活動しかしていませんでしたし、伝達事項なんて滅多にありませんでしたから、それはそれで仕方ないんですけどね。実際、このノートを週に一度渡しあうのは僕と彼女だけになりました。交換日記? はい、まあそんな感じですね。本当にとりとめもないことばかり書いていましたから。懐かしいですか。僕も懐かしいです。
 このノートで、僕はバスケ部のことでいろいろ励ましてもらいました。自分に自信がないときに誰かに励まし支えてもらえることはとてもありがたいですね。だから好きになったのかって? そうですね、今思えばそうかもしれません。
 結局彼女と同じクラスになることはありませんでしたが、ノート自体は三年になるまで続いていました。すごいですか? それは僕のクラス運の無さのことでしょうか。それにしても、彼女は毎回とても丁寧にノートを書いてくれていました。いつも皆さんが提出してくださっているノートよりも丁寧でした。すみません、冗談です。

 三年の梅雨の時期のことです。ちょうど全中の試合があった頃ですね。その時僕はバスケ部を辞めてしまおうかと思い悩んでいました。自分のやりたいバスケと、チームが目指しているものといいますか、それの差異が僕にはどうしても受け入れられなかったんです。
 一人で思い悩む僕に、彼女はとても気遣ってくれました。僕は彼女に何も言っていませんでしたが、ノートにも部活のことは一切書かなくなりましたし、それで何か気づいたのかもしれません。勘のいい人でしたから。ですが、その気遣いすら辛く感じてしまうこともあって、結局僕はバスケ部をやめて、彼女ともそれっきり会わなくなってしまいました。展開が急すぎる? すみません。でも本当に一瞬の出来事でした。もとよりクラスが違いましたし、図書委員に出なければ僕達が会うことはありませんでしたから。

 ノートはどうしているのか? 最後は彼女に渡しました。手渡すこともできなかったので下駄箱にいれて。今は彼女一人に図書委員を任せてしまったのが心残りです。切ないですか。そうですね。結局告白しなかったのかって? はい、できませんでした。本当に僕の三年間の片思いの話です。彼女は今どうしているんでしょうか。元気だと、いいですね。

 ああ、もうすっかりこんな時間になってしまいましたね。つまらない話にお付き合いいただきありがとうございました。日直の方、号令をお願いします。



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