学生にとって昼休みとは学校生活の中での楽しみの一つとも言える。

「速水くーん!バスケ一緒にやろうよー!楽しいよー!」
「お、俺はいいよ…遠慮しとく…」
「相変わらずノリわりぃなー!」

木陰に座り込む速水くんに向かって私と浜野くんはぶんぶんと手を振る。そして速水くんはヘッドホンを首に押し退けながらふるふると頭を振る。もったいないなあ、こんなにいい天気なのに。「やろうぜ!」「やだ!」そんな問答を繰り返していたらゴールの方からはガコンと清々しい音が。振り返ってみるとゴールを決めた倉間くんが余裕綽々とした様子でうっすらと口角を上げていた。うぐ、ちっちゃい癖に。

「ちょ、倉間ぁちょい待ち!そーゆーのなしだろぉ」
「ふん、油断してんのがわりぃんだよ」
「やるねえ倉間くん!よし、私もいいとこ見せてやろうじゃないか!」

地面に転がるボールを拾い上げ、適当にドリブルする。
「必殺!剣聖バーニングステップ!」
「なんかいろいろ混ざってんぞぉ!」

浜野くんの声を背中に、ほとんどダンクシュートの形で投げたボールは勢いよくゴールに突き刺さった。うん、我ながら決まった!返ってきたボールを手の中に収めながら浜野くんと倉間くんを振り返る。

「すっげー!やっぱ名字は上手いなぁ!」
「ハッ、たまたまだろ?まぐれまぐれ!」
「ふは、体育の成績が常に5なのは伊達じゃないのだよ。ゴルフ以外の球技なら任せたまえ」
「じゃー今度野球でもすっかあ」
「さんせーい!」

うわあ、楽しみ。先輩たちも誘ってみようか。うーん、バットを握る三国先輩やグローブ片手の南沢先輩なんて想像できない。


「まあ、バスケもなかなかいいよな」

倉間くんは私の手から受け取ったボールで器用にリフティングする。膝で跳ねるバスケットボールってなんだかすごく変な感じ。ミスマッチってやつ?

「おー。倉間くんがデレた」
「うっせえよ」

がしっ、と前髪を捕まれる。「へぶあっ」やりやがったなこいつ!負けじと倉間くんの長い前髪を掴む。痛っ、引っ張るのはなしでしょ!浜野くんの方を見ると「ちゅーかお前らガキかぁ!」とか叫びながら爆笑している。助けるとかそういう思考はないのか。ぎゃあぎゃあと終わりの見えない幼稚な攻防戦のせいで倉間くんの手からボールがこぼれる。「あっ、倉間くんちょっと、ボール!」「あぁ?」ボールが転がった先は速水くんの足元。速水くんは目を丸くして私達とボールとを交互に見る。


「なあー速水ぃー!ボール拾ってくれるかぁ」
浜野くんが声を張り上げると速水くんはやれやれといった様子でボールを拾ってくれた。そのまま立ち上がり投げる体勢に入ったが「あ」と間の抜けた声を上げて私の方を見る。え、私?

「そういえばさあ名字。今日の昼休み数学の追試じゃなかったっけ」
「あ」

忘れてた、やばい。
五限目の始まりを告げる予鈴が鳴ったのはその時だった。

110707


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