「猫って可愛いよねぇ…」

更衣室から出てきて、帰る準備をしていると、後ろから先輩の声がした。

「いきなりなんっスか、先輩」
「ん、ああ、あのね?最近猫によく会うの。」
「へぇ、どんな猫?」
「ん〜、いつも同じ子なんだけどね、顔と手足だけ茶色っぽくて、全体にグレーで、ふわふわなの。多分野良猫じゃないと思うんだけど、どこから来てるのかよく分かんないんだよね…可愛いんだけど」
「…もしかして、その猫、変な声で鳴いたりする?」
「あっ、もしかしてリョーマくんも会ったことあるの!?そうなの、その子ちょっと変わった声で鳴くの!」
「なんて?」
「んー…口では上手く言えないんだけど………ほぁら、みたいな感じかなぁ」
「…先輩」
「ん?」
「それ、俺ん家の猫っス」



30分後。
あの俺の発言に反応した先輩は、それはそれは嬉しそうな様子で。
会わせて!と頼まれたものだから、じゃあ今日は時間もまだ早いし、ということで、俺は先輩と一緒に家に帰っていた。

家に着くと、誰もいないのか電気が付いていなかった。
そういえば今日は全員遅いって言ってたっけ。

「先輩、ここでちょっと待っててくれる?」
「うん」

とりあえず先輩を家にあげて、俺はカルピン探し兼飲み物を取りに台所へ向かった。
俺の予想が正しければ、カルピンはこの時間縁側で昼寝中のはずだ。
縁側を覗くとやはりそうだったようで。
カルピン、と軽く撫でながら呼ぶと、起きて台所に行く俺についてきた。
二人分のジュースを入れて、先輩のところへ向かう。カルピンはそのまま後ろにくっついてきた。
が、ちょうど先輩が見えた頃、たたっと俺の前を走りはじめた。姿が見えなくなった瞬間、嬉しそうな先輩の声。
俺がたどり着くと、先輩の膝の上に頭を乗せ、先輩に撫でられているカルピンがいた。そのうえゴロゴロと喉を鳴らしている。普段あまり人に寄っていくタイプじゃないから、少し驚いた。

「あ、リョーマくん!」
「…やっぱりそうだったみたいっスね」
「うん、この子!まさかリョーマくん家の猫だったなんて…」

可愛いね、といって抱えて抱きしめる。
それに答えるかのように、いつもの鳴き声で甘えるカルピン。

その様子に思わずため息が漏れた。

ペットは飼い主に似るとはよく聞くけれど
(まさか、人の好みまで似るなんて、ね)










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