*佐久間視点
*超次元フィクションです.

 
 
「俺の昔か・・・?」
「そー。なんでお前はサッカー始めたのかなーって」
 
自身の座席の椅子を引いて屈む源田。俺よりも一回り大きな背中に向かって俺は突然切り出した。
練習が終わって空は真っ暗、おまけに下校時刻ぎりぎりの状況でどうして俺と源田は教室にいるかというと、俺の貸したノートを忘れてきたなんて言い出すからだ。そうしなくても俺は教室に用事があったから別にいいのだけれど。あまりに突然でしかも今更な内容に源田は頭を起こす。刹那ガンッと源田の頭と机の板とが接触した音が響いた。だっせぇ。重要なことだから二回言う、源田だせぇ。
 
「…頭ぶった」
「身長高いとロクなことねーな」
「それは今関係ないだろう」
 
頭を抱えて瞳にうっすらと涙を浮かべる目の前の大男があの帝国のゴールを守るKOGなのかと考えると、ヒトとは様々な顔を持っているのだなと思う。というかあのもさもさした髪型でも机に頭を打った衝撃を緩和できないとは。ますます源田の髪型の謎は深まるばかりだ。
…そんなことより本題だ。源田にもう一度同じ質問を繰り返すと、頭を摩りながら源田は渋々と口を開いた。
 
「サッカーを始めたのは、親が何かスポーツをしろと言い始めたのがきっかけだ。…恥ずかしい話、子供のころの俺は根性なかったからな」
 
ははっと笑う源田。それから俺は適当な相槌をしながら源田の話を聞いた。
 
「子供のころの俺はかなり内気でさ、男のくせに大人しいってよく言われた。すぐに泣いて親に何でもすがっていたんだ」
「…お前がか?想像できねぇ」
「だろ?それで俺が小学に入学したとき、さすがに危機感を持った両親が、心身を鍛えるために何か打ち込むものを。って勧めてきたのが地元のサッカークラブ」
「あー、そうなんだ」
「最初はサッカーなんて、って軽蔑していたんだけどな。ボールを蹴り始めたら楽しくて」
「へー。お前昔からGKやってたの?」
 
返ってきた答えは意外にもNOだった。じゃあどこを務めていたかと問うとこれまた意外にFWらしかった。
 
「子供だったからさ、自分が先頭に立ってシュートを決めるのがかっこいいと思っていたんだ」
 
でも…と言葉を詰まらせた源田の顔はほんのりとピンクで、正直気色悪かった。もったいぶらないでさっさと吐けと容赦なくどつけば練習後の源田の体から悲鳴が上がった。
 
「わかった!わかったから…好きな人が出来たんだ!!」
「ほう…」
「それで…好きな子を守るみたいに、ゴールを守るのもいいなって思って…GKに転向したら、そっちのほうが自分に合ってて…」
 
語尾はほぼ聞こえないに等しい、それくらい源田はもじもじとしていた。気色悪い。俺がぼそっと「それ、前言ってた源田の初恋?」とつぶやくと源田はとうとう顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。さてここからが俺の仕事だ。教室から出ようとする振りをして、さりげなくドアの近くまで
 
「確か今も好きなんだったよな?誰だっけ」
「・・・!!絶対誰にも言わないか?」
「おーおー、約束する」
「・・・佐久間のクラスの、安野」

「ふーん。・・・だってさ、ことみ」
 
 
そう言ってガラッとドアを開けると、そこには源田と同じくらい顔を真っ赤にさせた安野ことみ。源田どっきり大成功。今なら木暮の悪戯心も少し理解できる気がする、楽しいなこれ。
 
「さっ・・・佐久間!!」
「じゃっ、後は二人でごゆっくりー」
 
 
源田幸次郎の子供時代

 
「源田の好きな人を知りたい」ってことみからの依頼も達成したことだし、更に顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくしてるだっせぇ源田なんか置いて、さっさと帰ろう。そうしよう。
 
 
 

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