「じろぉーちゃーん、聞いてよぉー」
「はいはい、聞いてるって」
 
これで何度目だろうか。近所のことみ姉ちゃんが俺の部屋に大量の酒瓶を持って押しかけてきて、俺の前で飲みながら愚痴をこぼすのは。しかも今回は失恋話。ことみ姉ちゃんに好意を寄せてる俺には・・・正直きつい話だ。
 
「あんとき好きって言っときゃーよかったのかなぁー」
 
俺の気持ちになんて気付かないことみ姉ちゃんは他の男への未練を俺に語ってくる。辛い。だけど俺はきっとことみ姉ちゃんに信頼されてて、俺以外にことみ姉ちゃんの話を聞いてやれるやつはいないと思うと何だか優越感。
 
「じろーちゃんみたいにお人形さんみたいな顔だったら、ずーっと好きでいてもらえたのかなぁ・・・」
「ことみ姉ちゃんも綺麗だよ、でも飲み過ぎんなよ?酒って太るぜ?」
「ふぇ?そうなの?」
「あぁ、暴飲暴食の原因になるらしいからな」
「そうなんらぁー!じろーちゃんって物知りらねぇー」
「そうか?」
 
んーだのあーだのと適当な返事と共に段々と呂律が回らなくなってきたことみ姉ちゃん。普段のしゃっきりしたしゃべり方とは違う、俺なんかよりも子供みたいで、すんげぇ愛おしくなる。俺に抱きつく細い腕、白い肌。酒を飲んでる今だけは、ことみ姉ちゃんは俺のものだ。
 
 
「ねーじろーちゃん」
「ん?」
「眠くなってきちゃったぁ・・・」
「ん。もう寝な」
「うん・・・ねぇ、わたしが寝るまで、傍にいてね」
「あぁ、ずっと傍にいるよ」
 
 
佐久間次郎が飲酒のお供
 
 
だからおやすみ、ことみ姉ちゃん。
 
 
 
 


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テーマ「人外ファンタジー」
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