「幸次郎ってさ、何か弱点とかないの?」
「急に何を言い出すんだことみ」
だって気になるではないか。成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。家事も出来れば料理だってこなす。完全無敵のKOG様に弱点なんてあるのかと。幸い今日はお互い部活が休みだし、源田家にお邪魔しているので本人に聞いてみたというわけだ。
「幸次郎、人参食べれる?」
「あぁ、食べれるぞ」
「幸次郎、ほうれん草食べれる?」
「あぁ、食べれるぞ」
「素手で虫触れる?」
「あぁ、触れるぞ」
「じゃあゴキブ「それも大丈夫だ」・・・そっか」
くそう、私の苦手なものは全て大丈夫のようだ。それからまためげずに延々と質問を繰り返したものの幸次郎の弱点は見当たる気配が無い。
「まさか幸次郎がイナゴの佃煮も大丈夫だったなんて・・・」
「はは、案外美味しいものだぞ」
「んー・・・まぁ、弱点のない幸次郎も好きってことで・・・おやつ食べよっか」
家にいくといつも幸次郎が美味しい焼き菓子を出してくれるのだが今日は私が用意したのだと鞄をごそごそして、お目当てのものを出して、幸次郎に差し出した。
「はいっ!今日のおやつのバナナ!!」
「!?」
それまで笑顔だった幸次郎の表情が、一瞬にして凍った。フェイスペイントが施されていない頬が明らかにぴくぴくと痙攣している。目はあさっての方向を向いているし、心なしか汗も掻いているように見える。
「幸次郎もしかしてバナナ嫌い?」
「・・・!!・・・いや、そんなことは・・・」
「食べないなら私食べちゃうよー」
せっかく持ってきたのに幸次郎は食べないようで、私が皮をむいてバナナを頬張ると幸次郎の顔色はどんどん悪くなる。バナナの匂いが駄目なのだろうか。悪いことをしてしまったかもしれない。早く食べ終わらなくては。あ、おいしい。
「んぅ。はー、食べ終わった!ね、幸次郎、皮ってどこに捨てればいい?」
きちんと全て飲み込んでから幸次郎に尋ねた。でも幸次郎は動かない。うんともすんとも言わない幸次郎。手元にあるナナの皮をどうしていいかわからず、私は思い切り幸次郎の顔の前にそれをを突き出した。
「幸次郎ってば!!」
「ひぃっ・・・!」
源田幸次郎の弱点
顔の目の前に突き出されたそれに幸次郎はらしかぬ声を上げた。その様子に流石の私でもびっくりして、思わず幸次郎の顔を見るとびっしりと汗を掻いている。・・・これでようやく私はピンときた。
「これが幸次郎の弱点なんだね!」
「(これは・・・黒歴史・・・)」
-------------
バナナにトラウマを持っている源田君が書きたかったのですよ^p^