「源田君っ」
 
廊下で私の前を歩く愛しの源田君は、私の声を聞いてくるりと振り返る。
 
「中野か、2日ぶりだな」
 
駆け寄った私の頭を撫でてくれた彼の掌は、今日も大きくてゴツゴツしていた。
源田君とはクラスが違うからこうやって廊下で会うことくらいしか出来ない。
 
中等部での源田君の人気はアイドル顔負けだった。体育祭で彼が出る種目はギャラリーが凄まじいし、学園祭の彼のクラスは(佐久間君と同じクラスということが相乗して)集客数や売り上げ金額が共に1位。
 
考えてみれば私が源田君に名前を覚えてもらっていること自体が奇跡なんだけど。ちなみに私と源田君は図書委員になったときに昼番が一緒で仲良くなったの。このときも源田君目当てで図書室に来る女の子、多かったな。
 
「俺は次の時間、英語なんだ」
「私は国語。頑張ろうね」
 
いつもこの程度の会話が週に2回あれば良い方。源田君とお話しする度に、彼から滲み出る癒しオーラで元気になる。
でも、(今もそうなんだけど、)源田君とお話しすると他の女の子の視線が痛い・・・。だからいつも私からバイバイって切り上げちゃうんだ。ううっ、貴重な源田君との会話、さようなら。
 
「中野、待って」
 
源田君、私を呼び止めて制服のポケットから携帯を取り出して。
 
「今更なんだけど、アドレス教えてくれないか?」
 
って言ってきた。え、嘘、源田君が?私に?
私は一応携帯を手に持っているけど、ちょっと迷う。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
そうしているうちに源田君はするりと私の手から携帯を取って、半ば強制的に私のアドレスを赤外線で自分の携帯に送っている。私の携帯が、源田君の手に。それだけで爆発してしまいそうになる。
 
「はい、じゃあメールするな」
 
返信してくれると嬉しい、と言い残し、私の頭をもう一度撫でて彼は自分の教室に戻っていった。
 
 
アナタ中毒
 
 
私は何が起こったのかよくわからなくて、その場に立ち込めたまま。授業開始の鐘が鳴って、慌てて教室に入った。
憂鬱な授業を聞き流し机の中で点滅する源田君に触れられた携帯をそっと開くと、それは真面目だと思っていた彼からのメールだった。
 
源田君にとってはただのお友達だとしても、アナタは私にとって大切な動力源。
 
 
 
 
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源田君→←夢主ちゃん
きゅんきゅんしたいな、学園源田君に。って妄想から生まれた話。
ちょっと強引に意中の彼女からアドレス入手する男前な源田君。普通の人にやられたら「は?」ってなるけど源田君にならおk。
 
 

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