※キミの名前の続きです。
 
美希が我が家に来てから1週間が経った。
両親は俺がちゃんと美希の世話を見れるかどうか心配していたらしいが、俺は毎日きちんと世話をしている。
美希はまだ子猫なのに賢い。躾を一回で理解する。あまり手間がかからないからこそ毎日苦もなく世話ができているのかもしれない。
 
「とにかく美希は可愛いんだ。部活から家に帰ったら必ず俺のことを出迎えてくれるし、夜は俺と一緒に寝ようとするし。この前なんてな・・・」
 
部活帰りは佐久間や鬼道に夢中になって美希について語る。それくらい可愛いのだ。
そういうと大抵「お前は親馬鹿だな」と鬼道は笑い、佐久間は俺の親馬鹿加減がキモいと言ってくる。・・・キモいだろうか。
 
「そんなに可愛いなら、今度源田の家に遊びに行くかな」
「俺も是非行こう。猫には興味がある」
 
そんな流れで、明日の練習後に佐久間と鬼道が家に遊びに来ることになった。
 
 
「美希、明日うちに友達が来るんだ」
 
にゃー
 
「お前を見に来るんだぞ、いい子にできるか?」
 
にゃー
 
「よしよし、じゃあご飯にしよう」
 
にゃーん
 
 
俺は毎日美希とのコミュニケーションを欠かさないようにしている。サッカーでも何でもそうなのだが、コミュニケーションとは互いの信頼関係の要だ。もちろん美希との間でもそうだと思う。だからこの時間も大切にしているのだ。
美希に水(最近暑くて牛乳が悪くなりやすいから水にしている)と缶詰を与える。今日も残さず食べることができたから良い子だ、と頭を撫でてやる。いつもキレイに毛づくろいをしているのだろう、美希の毛はつやつやしている。
 
そういえば隣のクラスの中野美希も、髪の毛が綺麗だという印象がある。今日は体育があったから二つに結えていて、いつもより幼く見えて可愛かった・・・・・・ってこれでは俺がいつも中野をストーカーしているみたいではないか。違う、断じて違うぞ。気になっていて目が行くだけなのだ。
一人でそんな言い訳がましい話を展開し終えて、ふと美希が何処にいるのか確認すると、洗濯機の上で丸まって寝ていた。最近のお気に入りの場所のひとつのようで、働きすぎて熱を帯びた洗濯機の温かさがいいらしい。今に洗濯機の中に落ちてしまうのではないかと俺ははらはらしている。だが美希の寝顔を見るとそんな心配が一気に吹っ飛んで心が和やかになるのを感じた。
 
 
 
練習終了時刻をタイマーが伝える。約束通り今日は佐久間と鬼道が家に来る。
「美希にお土産買ったんだぞ俺!!早く遊びてえ!!」なんてノリノリの佐久間。鬼道は今日のために猫のガイドブックを買って猫とじゃれる方法を研究したらしい。・・・相変わらず隙がないな。
 
「ただいま。」
 
二人を連れて家に入ると玄関に美希が出てきた。今日は土曜日でいつもより帰りが早かったからこの時間を予期していなかったのだろう。少しびっくりしているようだった。
 
「今日は友達を連れてきたぞー」
 
にゃー
 
俺たちの会話を見て鬼道が「ほう・・・」と感心していた。ゴーグルで隠れて詳しくは見えないが興味津々なのだろう。鬼道たちを先に部屋に通して、俺は茶菓子を用意しにいく。その間に二人と美希が交流を深めるのだろうと思っていた。
 
 
しかし部屋に戻った時、俺は目の前に広がる光景をただただ呆然として見るより他なかった。佐久間が美希と対立している・・・いや、正確に言うと佐久間が一方的に美希の攻撃を受けているのだ。俺は未だかつて美希がこんなに息を荒立て怒る姿など見たことがない。
 
「美希っどうした!?」
 
俺が美希を抱き上げると鬼道は安心して息を吐いた。
 
「佐久間のペットのペンギンの臭いに反応したのだろう」
 
ほら、猫にとって鳥類は敵だろう?と説明する鬼道に対しては佐久間のように拒絶を示さない美希を見て俺は納得した。
 
「残念だったな、佐久間」
 
にゃー
 
 
キミと友達
 
 
佐久間は悔しそうにしていたが、美希に鬼道という新たな友達が出来たということで。
 
 
 
 





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