今日俺のクラスは3･4時間目が調理実習だった。
何を作ったかというと、よくケーキ屋で誕生日ケーキ買ったりすると"〜ちゃん誕生日おめでとう"とか書いてあるチョコあるじゃん、アレ。帝国の調理実習は他校と一味もふた味も違うぜ。
俺は自分で言うのもなんだが結構器用なほうだと思う。その証拠にほれ、手には今日の俺の渾身の作品、皇帝ペンギンチョコが豪勢なラッピングを施されて存在している。
これは憧れの鬼道さんに食べてもらおうと作る前から決めていて、ちゃんと渡す時のことも綿密にシュミレーションしてある。あとは部活が始まる前に鬼道さんを教室まで迎えに行って、チョコを渡して、一緒に部活にいくだけだ。完璧。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に俺は席を立ち、鬼道さんがいる教室まで鞄とチョコを持ってダッシュする。鬼道さんの教室はまだSHR中だった。あれ、俺自分のSHR出てないけど。まあいっか。
鬼道さんの教室から終礼が聞こえる。あ、鬼道さんが廊下に向かって歩いてくる･･･!!
「鬼道さ･･･「佐・久・間・っ!!」･･･。」
あー、まただ。
俺と同じクラスの中野。俺が鬼道さん関係でアクションを起こそうとすると必ず邪魔してくる。何なんだ、いつもいつも。鬼道さんに惚れるのはわかるけど鬼道さんは俺の大事な人なんだからな!!
「お、佐久間と美希か。揃ってどうした。」
鬼道さんは慣れた様子で俺たちを見ている。ていうかこいつ何で鬼道さんに名前呼びされてんだよムカつくな。
「こいつは何でもありません鬼道さん!さ、早く部活に行きましょう!!」
「えー、鬼道まだSHR終わったばっかりじゃん。急に部活なんて辛くない？」
「鬼道さんをお前と一緒にするな!!鬼道さんは凄いんだぞ!!」
ああもう、こいつがいたらチョコ渡せないじゃん。
「大体いつもいつも俺と鬼道さんの邪魔ばっかりして、お前何がしたいわけ？迷惑なんだけど。」
俺にしてはきつめに言葉を発した、と思う。言い返してくるか、と身構えるとなんと中野は目を潤ませているではないか。鬼道さんもいつもとは違うそいつに少し動揺しているようだった。
「そんな言い方しなくてもいいじゃん･･･私、ただ佐久間が私より鬼道と仲良くしてるの見るの、嫌、なんだもん･･･。」
そういうと中野は俺たちに背をくるりと向けてどこかに走っていってしまった。
「･･･佐久間、言い過ぎだと思うぞ。」
鬼道さんが言ってきた。気に入らない、何で俺が怒られなきゃいけないわけ？
「･･･あれくらいきつく言わないとわからないやつなんです。行きましょ。」
あ、あとコレ鬼道さんに。と例のチョコを差し出すと鬼道さんは小さく溜め息を吐いて俺に返してきた。
「これは、俺がもらうものではないんじゃないのか？」
･･･え？
鬼道さんは何を言っているのだろうか。これは鬼道さんのために作ったものなのに。
「お前はそれを、誰に食べてもらっているところを想像して作ったんだ？」
それを聞いて黙った俺の肩をぽんぽんと叩いて、ただ一言「追いかけてやれ」と言い残し鬼道さんは部室棟の方へ行ってしまった。鬼道さん見透かされていたんだな、俺の本当の気持ち。やっぱりあの人には敵わないと自嘲の笑みを浮かべながら中野を探しに行った。
中野はすぐに見つかった。教室の窓際のあいつの席に突っ伏していた。
「･･･中野、ごめん」
「･･･うん。」
「言い過ぎた。あんなつもりじゃなかったんだ。」
「じゃあどんなつもりだったの」
それを言われると辛い。中野は顔を上げて、言い返すことのできない俺を見て、教室を出ようとした。このままじゃずっとこいつとはこのままな気がする。俺の直感が無意識に中野の腕を掴んでいた。
「何よ。」
「コレっ･･･!!」
俺はさっき鬼道さんに返されたチョコを突きつけた。中野はいまいち状況が飲み込めていないようだ。
「お前にやる。貰え。」
言い方がなんとも上から目線になってしまった。謝ってるのにこれはさらに怒るだろうなーと中野の顔をちらっと見ると、笑っていた。
「･･･ありがと、佐久間。」
不器用な愛の伝え方
謝るのは苦手なんだ。だから、チョコを受け取った方とは反対側の中野の手をとって、玄関まで中野を送ってやった。こいつ怒ったり泣いたり笑ったり、今は顔真っ赤になって静かだし。本当にわけわかんないやつ。
〜余談〜
部活が終わったあと携帯のチェックしたら、中野から「チョコ固い」ってメールが来ていた。･･･何でだ？
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短編アンケより、さっくん。
さっくんは器用だけど、変なところで不器用に違いない。
固かったのはチョコが温かいまま冷蔵庫に入れて固めようとしたからでしょう。
チョコの原理がわかっていないーさっくんかわいい^^
ヒロインとさっくんは付き合っててもなくても、どっちでもいいように文章作りました。
アンケートご協力ありがとうございました☆
またよろしくお願いしますー(^ω^)