今日のHRは進路について。
友達はみんな「ここには何もないから、高校は本土に進学する」と言うけど、私はそうしたいとは思わない。理由はよくわからないけど、私はこの島が好き。海はお母さんみたいに優しくて好き。
私は県内に数箇所しかないうちの自宅から一番近い高校に行くつもりだ。進路調査書も特に悩む必要なく提出、提出した者から順番に下校ということだったから私はさっと帰り支度をして、教室を出た。
「おう!美希!!」
後ろから凛とした声が私を呼び止めた。声でわかる。綱海君だ。
「お前、調査書書くの早えな。他の女子みたいに悩んだりしねーの?」
「うん、私県内の高校がいいから悩まなくていいんだ」
綱海君とはそんなに仲が良いわけではない。単に彼はフレンドリーで誰とでもよく話すからさして珍しいことでもなかった。
「ほー、お前は本土に興味ないのかよ」
「あんまりないかな、私この島結構好きだし」
私がそう言ったときの彼の顔ったら・・・目が輝いていて、急に私の腕を引っ張って歩き出した。
「ちょっ…!?」
「いいからいいから」
私に特に用事はないし大丈夫なんだけど、綱海君歩くの早いし、腕捕まれてるとなんだかちょっと恥ずかしい。
いつの間にか学校から出て、通学路を外れて、人気のない林道を抜けた先には海が広がっていた。ずっとこの辺りに住んでいたけどこんなところ知らなかった。「綺麗…」月並みな言葉しか出てこないけど本当に綺麗な海岸。
「俺の癒やしスポットだぜぃ!!」
得意そうな顔で腕組みをする綱海君。私は砂浜に鞄を預けて海岸へ近づく。すぐ側で泳いでいる熱帯魚。めったに人が来ない土地だということがすぐにわかった。
「サッカーとかサーフィンでうまく行かなかったときはよ、ここでゆっくり考えんだ。海の声を聞いたらすっきりするぜ」
綱海君が砂浜にぼすっと寝転がり、深く深呼吸をした。つられて息をしたらいつもより潮風が濃く感じた。
「俺、本土の高校でサッカーやるか迷ってんだよ」
突然の告白。返事をするより黙って聞くべきかもしれない。…スポーツ以お外で真剣な顔付きな彼を見たことがないから、どうしたらいいのかわからないっていうのが本音。
「俺もこの島大好きだから、正直葛藤だった。けど」
くるっと上体を起こして私の腕を下に引いた。必然的に綱海君の横に座る形になった。横を向けばニッと笑う彼の表情。
お前がいるなら大丈夫だな
この海の声はしばらくお前に預けたぞ、なんて勝手なこと言ってくれちゃってるけど、悪い気はしなかった。だって預けるってことは帰ってくるってことだよね?
私も勝手に待ってるよ、綱海君。
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なぜか消 え て る し!!
めっちゃラスト頑張って考えたのに、消えててショックです。作り変えたはいいんですが、前のほうがしっくりきます。ごめんなさいでした!!
リクエストありがとうございます☆