感じないよ、もう何も
 
俺はFFIイタリア代表選手。
彼女の美希とは、付き合ってから次で1年半の記念日を迎えるはずだった。
 
俺はサッカーと同じ位美希を愛していた。
けど美希は俺がいつも傍にいてやれない環境に耐えきれなかった。
 
会う度会う度、俺の顔を見て涙をこぼし、泣き止めば俺にしがみついて離れない。
次第に俺の前で笑ってくれることの方が少なくなってしまった。
こんなに愛されてるなんて幸せなことだとは思うけど、それ以上にこんなに目を腫らせて泣いている美希の姿を見るのが辛いと思い始めた。
それでも俺は美希を手放したくなくて、なるべくこまめに連絡をとったり美希の我侭を聞いてあげたりすることでなんとか関係を保ってきた。
 
 
***
 
 
ある日、俺と美希はショッピングモールに出掛けることにした。
俺は久しぶりに美希の姿を見れると思うと試合の時以上にわくわくして、予定していた時間より20分も早くに着いた。
 
美希はどんな服を着てくるのだろう、前に出掛けたときに着てきたシフォンのワンピースは美希の黒髪とマッチして可愛かった。ふんわりしていて、俺は街中だというのに美希を思いっきり抱きしめてしまった。・・・そういえばその時も美希は泣いていた。
 
俺の脳内は美希のことでいっぱいだった。
そんなとき後ろから声をかけられた。美希かと思って振り返ったら、知らない女の子2人でちょっとがっかりした。
 
「イタリア代表のフィディオ君ですか!?」
「あぁ・・・そうですけど。」
「きゃー!!実物かわいい!!一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「あ、いや、俺今待ち合わせしてるので・・・」
 
やんわりと断っているのに押しが激しい女の子たち。いい加減しつこいな、と思い始めた頃、俺の視界には今にも泣きそうな美希の顔。まずい。
 
「すみません、ちょっ・・・美希!!」
 
俺はどんどん集まる人を掻き分け美希の元へ走る。
 
「フィディオ・・・」
「ごめん美希、来てくれて嬉しいよ。さ、どこに行く?服でも見ようか・・・」
「・・・や」
 
ぱしん
差し出した手がはじかれる。美希の瞳にはやっぱり涙。
 
「美希、どうした?」
 
行き場のなくなった手が美希の頭を撫でる。
美希はこうされるのが好きだから、こうすれば落ち着くんじゃないかと思ったのだが、泣き止むどころか更に泣いてしまった。
 
とりあえず美希と俺のお気に入りのカフェに入る。
一番奥の目立たない席をとって、いつも美希が注文するカプチーノを頼む。
 
 
届いたカプチーノの湯気をぼーっと眺めたまま飲もうとしない美希。
だいぶ痩せたと思う。顔色もよくない。
美希をこうも変えてしまったのは、俺だ。
俺が美希を無理やり繋ぎとめておいた結果がこれなのだと、気付いた。
 
 
美希はもう幸せではない。
俺じゃ、美希を幸せに出来ない。
だからもう美希を俺から解放してやらなきゃいけないんだ。
 
 
冷めてしまったカプチーノに、ようやく美希が口をつける。
ごめんね、美希。今楽にしてあげるから。
 
俺は息を呑む。
 
 
「美希、別れよう」
 
 
 
 
美希は泣いて拒んだ。
 
「ごめんなさい」
「私に悪いところがあるなら直すから」
 
「だから、私を捨てないで、フィディオ」
 
 
 
でも俺は決めたんだ、美希を解放するって。
だからもう俺は美希が泣いても何も感じない。
 
さよなら愛しい美希。
 
 
 
 
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シリアス話。
フィディオが適任だと思って前から目をつけていました^^
このサイト、あんまりフィディオ好きさんが来ないらしい・・・。
以下設定↓
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夢主ちゃんは、ちゃんとフィディオを愛してます。
寂しくて泣いてしまったのです。
抱きしめられたら嬉しくて泣いてしまったのです。
自分がフィディオの愛に応えてあげられているのか、悩んでいたらどんどん体が壊れちゃった。
でもフィディオとは別れたくないから必死だった。


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