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「なまえ城下に行くぞ」

突如扉を開ける音。
え、なに。いきなりどうしたんでしょうか政宗さん。…と彼の第一声にきょとんと首を傾げてみた。


「今日の執務はどうしたんですか?」
「んなもん終わらせたに決まってんだろ」

無言で小十郎さんをみやれば彼は私の視線の意味に気づいたようで口を開け「政宗様は今日の分、終わらせておりました」と告げた。
は…はやい。夕時まで掛かるときがほとんどなのに、今日はまだ真昼間だ。こんなはやく終わったときはあっただろうか。とちょっと失礼なことを考えていれば頭をガシガシと掻き乱された。


「約束だったろ?」

そんな彼の言葉に、この城へ連れて来られたときを思い出した。
草木が茂る道のりの中彼が自慢げに言ってた城下の様子。三人で行こうと約束したあれだ。政宗さんはそれをしっかり覚えてくれてたらしい。そして約束のために仕事をはやく終わらせてくれた。なんだか…すごく嬉しいかも。この誘いを断るなんてするはずがない。

政宗さんと小十郎さんの三人でお出かけすると春ちゃんに言えば「では、おめかしを」と意気揚々とした瞳でこちらを見つめていた。今日の着物は小袖の群青色。いつもより派手さはないものの触り心地はバツグンだ。これもまた政宗さんからのプレゼントであることを知り、絶対汚さないようにしよう!と心に決めた。
春ちゃんにより髪型も決まり政宗さん達と合流する。濃紺色の着物を着た政宗さんと濃緑色の着物を着た小十郎さん。二人とも一般市民を装った格好なのに彼らの容姿からかずば抜けて格好良く見えた。






城下を目前に私は驚き口を開けた。
大通りの両脇に軒を連ねる商店。明るい声が響く街中。今日は催し物もあるらしく更に賑やからしい。

笑い合う人々。
戦国の世といわれている世界だから、言い方が悪いかもしれないがもっと質素な生活をしているのかと思った。なのにその考えはこの城下を見て覆され圧巻されてしまったのだ。

「この町はこの世の一部だ。ここと同じように栄えてる町もありゃ、貧困に苦しむ町もある」

どこの民も平凡に生きているわけではない。ただここは城下ということもあり栄えているのだと。

「俺の手の届く範囲の奴らの顔は笑っている表情でいてもらいてぇ。でもそれだけじゃ足りない。だから俺は天下統一して乱世を抑えるんだ」

そうすれば民は苦しまずに生きられる。武将達の戦いに巻き込んでいる民を平和に過ごさせるにはそれしかないのだと。
この人は先を見据えている。なにが彼らにとって一番安心して生きることの出来る世の中なのかと彼なりに考えたものなのだろう。城主としての責任を背負う政宗さんはいつになく真剣だった。

「まさ…」
「Stop! 城下では言われちゃマズイんだ。俺のことは藤次郎と言え、小十郎は景綱だ」

名前を呼ぼうとしたのだがそれはすぐに止められた。政宗さんの言葉にそうだよね。一国の王が城下にいるだなんて知られるわけにはいかない、と慌てて納得する。

「は…はい。えっと藤次郎様と景綱様でいいんでしょうか」
「様もやめとけ」
「え…と、…藤次郎さん?」
「Oral! 上出来だぜチビ助」
「…え、ちびすけ?」

まさかの返しに疑問を抱く。な、なぜいきなりチビ助と言われたのだろうか…!?

「今じゃお前は俺の妹だからな、念の為仮の名を使っとく。だから今からお前はチビ助だ。わかったかチビ助」
「わ、わかりました……藤次郎さん」

何度もチビ助チビ助って…なんともまあ簡単なネーミングだ。でもそんなものを否定する必要もなくそれを承諾すれば政宗さんはセットを乱さないようにポンポンと頭を叩いた。



「して藤次郎殿、どちらに向かわれますか」
「そうだな…腹も空いてきたし甘味処でも行くか」
「お団子ですか?やったー!」
「…承知致しました」

以前政宗さんが美味しいと言っていた甘味処だろう。お昼に何かを食べるのは久々だからなんだか懐かしい。
この世界に来てから昔の人は朝と夕の二回が食事であることを知り驚いたときもあった。はじめはそんな生活に慣れなくて大変だったけれど今ではそれも慣れたものだ。
ときたま現代でいう3時のおやつならざるものを頂いたりして幸せに浸るときもあるけれど。食べ物を噛み締めるたびにやっぱり食べるっていいよねーと思う。

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