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まだ、春ちゃんには見つかっていない。
小さい頃は鬼ごっこやかくれんぼとかしょっちゅうこんなことをしていた覚えがあるけれど、歳を重ねるたびにこんな遊びの選択肢は消えてしまっていた。大人になればなるほど当たり前だったこんな遊びを忘れてしまっていたのだ。
「…なにやってんだ」
「わっ」
突然背後から声が聞こえた!思わず声上げながら即座に後ろを振り返る。するとこちらを覗き込む政宗さんの姿が見えて、春ちゃんじゃなかったことにホッと胸をなでおろした。
「春と鬼事か?」
「よ、よくご存知で!」
政宗さんはよくわからないけど、なぜだか知っているみたいだったので春ちゃんに居場所を言わないで下さいね!と言っておく。
そういえば昔の“鬼ごっこ”を“鬼事”と呼ぶ事を春ちゃんから聞いた。鬼ごとっていうか、隠れ鬼ごっこなんだけど。
「なまえ様ーっどこですかぁ」
「あ、春ちゃんが来た!!」
慌て声を荒げる私を見て政宗さんは何かを閃いたかのように怪しげな笑みを浮かべ私の体を軽々と抱えあげある一室に飛び込んだ。閉じた襖から少しのぞきこめるくらいに間を開け辺りを伺いつつ此処なら見つからないと彼は笑う。
「私春ちゃんとお友達になれてよかったです。こうやって遊べることができて、政宗様ともお話できて楽しいです。ありがとうございます」
見つからないために小声だけど政宗さんに告げた。嬉しいこと楽しい事ぜんぶ政宗さんに分かってもらいたくて笑う。彼の顔を窺う為に見上げようとすればその動作は彼の大きな手に静止され私は床を見ることしかできない。どうしたのかな、と思いながら彼の手を振り払うこともせずただされるがままに撫でられた。
なんだかほわほわする。
なんだか嬉しくて自然と頬が緩むのが自分でもわかった。
「おやおや、政宗様こんなところでお遊びですか?ならば今日の執務はお済みになったのですね?」
「!!?」
そんな世界を一気に崩壊させるもの。ドスの効いた低音ボイスにピシリと背筋が凍る。サアアア…と顔から血の気が引くのがわかるほどこの状況に青ざめるしかない。
「…そ、その声は」
「聞かなかったことにしてぇ…」
この部屋には私たち二人だけではなかったようで…嫌な予感がしつつも私たちは恐る恐る後ろを振り向いた。眉間に皺をよせ、此方を見るヤっさんが…声をあげた。
「貴方達は何をしていらっしゃるのですか!」
「小十郎うるせー!」
「ひぃいい!ごめんなさいぃぃ!」
耳に手を当てつつギャアギャアと騒ぎ立てていればもう一人、見つかりたくなかった春ちゃんの姿。目を輝かせ私を見つめて微笑んだ。しまったー
「あー!なまえ様見つけましたー!!」
「おいおい!小十郎のせいでなまえが見つかったじゃねーか!」
「みつかったじゃないですかぁああ」
「!?わ、私のせいですか…!?」