19


今日もいつもと変わらない寝心地だった。いつもと変わらず床についた筈だった。だけど真っ暗な夜、私は目が覚めた。


かなしい。
いままで溜め込んでいたたくさんの感情が目から溢れる水になってぼろぼろと私の頬を伝う。流れる一筋の線を何度拭えどそれはおさまらない。悲しさとか苦しさとかたった独りの現実が押し寄せて、ぐるぐる心を渦巻くの。出口の見えない孤独感が私の内臓を押し潰してしまう。もういっそのこと潰されてしまえばいいのに。とさえ思う。



「おかあ…っさ、…おと、っ…」


ホームシックもいいところだ。家族の夢を、見ただけなのに。

何で今更、


大切な家族と笑っていたのにたった独り私はそこから消えていくんだ。手を伸ばせど届かないそれ。まるで私がはじめから存在していなかったかのような。嗚呼思い出すだけで悲しくなる。私はあそこにいたのに。いたはずなのに。私をあそこに存在させてはくれないの?

声を出して泣けば気分が晴れるだろうか。無邪気な子どものように声を荒げ取り乱せば、少しでも悲しさを緩和させられるだろうか。海に向かって叫ぶように、今此処で。
「…ぅぁ、…っ」

だけど此処でそんなことは出来ない。聞こえてしまう。出そうになる声を押し込め、口をつぐむ。ふとんを握りしめ耐えろ耐えろと心に叫ぶ。なのに声を我慢すればするほど涙はポロポロ止まらない。
いままで家族や友達、みんながいなくても私は、普通でいれた。とくに深く考えることもしなかったしこの世界に順応したいが為に昔を振り返る余裕なんてなかった。だけど、あの時、私は初めて声に出して認めてしまったんだ。私は独りなのだと。
私が生きていたことを証明する人はいない。私自身が証人であるはずなのに、この体で私自身の何を信じろと?

ちいさくなって弱くなったのか。体も、心も。こんな泣き虫じゃなかったのに。
大の大人が笑っちゃうよホント。

溜め息が漏れ私は小さく笑い瞳に溢れる涙と頬に流れた筋を拭った。

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