12


春ちゃんに連れられ私は政宗さんの部屋へと訪れた。そこには政宗さんと小十郎さんがすでに腰を下ろしていて、私を待ってくれていたようだ。春ちゃんは私をここまで連れ終えるとこの場を後にし私と彼らで三人となった。



「hum... 似合ってるぞ」

政宗さんはいかにも馬子にも衣装だと言いたそうな表情で告げていた。そこに反論を入れたいのだが、私はこみ上げる言葉を無理やり押し込め小十郎さんが指示した位置へと正座した。間違いなく痺れるよこれ。

政宗さんから頂いた蒼色の着物はとても動きにくい。しかし彼曰く、これが普通なのだそうだ。私は動きにくいから嫌がったのだが小十郎さんから政宗さんの妹となった以上それなりの身だしなみは必要だと言われた。
そういえば小十郎さんといえば彼が私のことを“様呼び”をし始めました。その瞬間思わず口に出してしまった「なにか悪いものでも食べたんですか!?」という私の問いかけは政宗さんを盛大に吹かせてしまいました。思い出しただけで恥ずかしいことです。ごめんなさい小十郎さん。

「あの、本当に妹的立場で宜しいんでしょうか」
「俺が良いっていってんだからいいんじゃねーか」
「…いや、ですが…身元不明扱いですよね私」
「なんとかなる」

なんとかなるって、妹扱いなんだよね。これは政宗さんの意思だけでなんとかなる問題じゃないだろうに。妹設定ってことは政宗様のご両親にだってご迷惑をかけるはずだ。

「政宗様のご両親は私のことを知らないでしょう?」

政宗さんは私の問いかけに間をおいた。

「…父上はもういない。母上は気にするな」
「政宗様…?」

そのときの政宗さんの暗い顔。いや、そう見えただけかもしれないけれど、彼にとって実のご両親の話題はタブーな単語なのだと感じ取った。
沈みかけた雰囲気に慌てふためいていれば小十郎さんが口を開く。


「さて、そろそろ朝餉を食べて頂けませぬか?今日はなまえ様のお披露目で忙しいのですから」
「…小言は聞き飽きたぜ小十郎」

そう、昨日このお城へとやって来、今日は私のお披露目会をするそうだ。
突然現れた私は政宗さんの義理の妹としてたくさんの人たちの前へ紹介される…うわ、今考えただけでも緊張する。そんな私に政宗さんはただの宴会だと告げた。どんなものでもこの伊達軍はすべてを賑やかで派手な宴会へと変えてしまうらしい。それは彼らの特色ゆえか暴走族の血ゆえか(これはウソですごめんなさい)………まあどんな状況でも私は緊張する自信がある。だって人前が苦手なんだもの。

「なまえ様、お箸が進んでおりませぬぞ。いかがなされましたか」
「あ…すみませんちょっと考え事を…」

まるで母親みたいだ小十郎さん。そう思ったのは仕方ないと思わない?そんな彼に様呼びされるのはとても忍びない。私が小十郎さんのことをお義母さんと言いたいくらいなのに。

「小十郎さん。私のことは呼び捨てにしてもらいませんか?前は小娘扱いだったじゃないですか」
「前は前です。なまえ様のご立場はお変わりになられました。どちらかといえば貴方様が小十郎とお呼びになさいませ」
「それはお断りです」

まさに平行線。
交わらない。

「…あ、このゴボウ美味しい」

そんな私の口へ運ばれた野菜。食べた瞬間に広がる大地の味というのか素朴で繊細。それに良い歯ごたえ。味付けもとても美味しい。





自然と紡がれた言葉に政宗さんが突然笑い出した。

「なまえそりゃ小十郎が作った野菜だ」
「え!?小十郎さんが!?」

驚き小十郎さんとこのゴボウの煮付けを交互に見る。

「それと味付けも小十郎がしてんだぜ」
「っうぇええ!?」

ヤクザって料理するんd…間違えた!お侍さんって料理するんだね!その事実に驚きです。だって城内にあれだけ女中さんがいるのにお侍さんが料理するとは思わなかったから。


「お褒めに預かり光栄に御座います」

箸を置き此方に軽くお辞儀をする小十郎さん。


「凄いです!美味しいですよ小十郎さん!!」

ぱっと笑顔を綻ばせ笑うなまえ。
その素直な自然体を魅せる少女の姿に小十郎もしかめっ面な顔を綻ばせ笑った。

「あ!小十郎さんが私の前で笑った!」


嬉しい嬉しいとはしゃぐ小さな子供。
それは二人の大人の心を暖かくさせた。


「今度畑の手伝いをさせてくださいね!」
「それは成りませぬ。姫様のお手を汚させるわけには…」
「じゃあこれは妹としてのお願いで!反論はなしですよ!」


「…お前、肝が据わってんな」
「変わったお方だ…」

そして彼女の強引な姿勢は二人の大人を驚かせた。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -