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「着いたぜなまえ!welcome to my home!!」

ついに着いたようだ。彼のお城へ。

目の前にそびえ立つ巨大な城。一般ピープルだった私にとってこんなにも立派なお城は見学するだけだったのに。社会科見学とか修学旅行とかそんな場面で見た城と同じようなものなのに、生でしかも同じ時代で見る城はまるで違う。まさかお城へ入ることになるとは。開いたままの口が閉じられない。
あ、ちなみにこのお城は青葉城って名前みたいです。



「政宗様お帰りなさいませ」

それを出迎えるのは女中たち。…た、確かそんな言葉だったよね?

彼女たちは彼らを出迎え、私を見る。視線が合う。すると誰もが固まり私を困惑した目で見ていた。



ええっと…


場違い、って感じ?

アウェーってこんな感じ?



なんか、もう、帰りたい。





「梵お帰りぃ!」

女中の間をぬって現れた男の人。突然の登場に私はびっくりしたけれど、それ以上にびっくりしたのは彼の顔が政宗さんとどことなく似ていることだ。



「え?ぼ、梵っ!この子供どうしたの!?」

そして私を見るなり驚愕した顔で私を指差した。それもそうだろう。いきなりですもの。自身の主が見ず知らずの子供を抱えているんですもの。


「まさか拉致!?拉致してきたの!?」
「違う」
「じゃあ誘拐?ちょっと何しちゃってくれんのさ大将!」
「成実!変な言い掛かりはやめろ」

政宗さんに向かって対等に話すこの人もまた偉い人なのだろうか。彼らの話題の中心にいるだろう私は話がついてゆけません。


「…まあ冗談は置いといてさ、この子はいったいどうしたんだい?」

さっきとは打って変わり真剣な面影で政宗さんと見合う成実さん。その眼差しに政宗さんは一度溜め息を漏らし、少し考えたあとこう告げたのだ。









「妹だ」と。




これはね。(笑)ですよねまさに。私も思わず(苦笑)をするところでしたよ、ええ。




「政宗様!?いったい何を!」

ほら、政宗さんのひと言で小十郎さんが怒ってます。彼の方を振り返らずとも彼の表情が浮かんできますとも。

「こいつは俺の妹として丁重に扱え」

そんな小十郎さんにもお構いなしに政宗さんは我を貫き通す。

馬に乗せたときと同じように、私を肩に抱え(私は荷物的扱いなのでしょうか!?)馬から降りる。政宗さんの向きが正面と例えるならば私は政宗さんの逆を見ている。すなわち私の視線の先には小十郎さんがいるわけで……私の顔をこれでもかと凝視しておりましたとも。怒りの表情ではないにしろ、怖いです。


「小十郎そういうことだ。you see?」

これには小十郎さんも押し黙るしかなさそうだ。なんだかこういう俺様的な人が主だと、家臣の方たちが苦労しそうと思ったのはまた別の話。




「家臣を黙らせるにはこれくらいしねーとな」

先を考える政宗さんは笑う。身元不明なガキの姿をした私をこのお城へ置くには正当な理由が必要なのだろう。政宗様の一存でも何か無理があるのか。…まあ妹自体無理がある気がするけど。


「…政宗様」
「どうした?」
「どうして、…そんなに優しくしてくれるんですか」

もしかしたら身分を政宗さんと近いものを装い陰険なものから遠ざけてくれたのかもしれない。ま…それは私の勝手な予測だから何とも言えないけど。でもそう考えるととても申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


私ここに来てよかったのかな。ていうかむしろ、私がここに来たいと望んだわけじゃないけどね。問題はそこだけどね!




「ah-... 気分だな」

平然と言い切りましたねこの人。気分でそんな大層な事を決めて良いんでしょうか!

私の考え損ですね。ハハ。


「行く先が不安です」
「Han!! 奇遇だな俺もそう思ってた」
「……。」

この城の主の気分により、
私はお姫様デビューをしそうです。




そんな私を見るのは小十郎さん。偶然にもぱちりとあってしまった視線から逸らすことができず、私はいったいなにを考えたのか彼へと手を振った。小十郎さんはいちどこちらを見て眼をおおきく開いたけど、それ以後何もなかったかのようにただ政宗さんの後をついて行った。

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