「こんにちは」
「こ…こんにちは」

ふわりと美しく微笑むお方。
いや美しいというよりかふつくしいがよく似合うかもしれない。
というか私のボロボロな家がこの人に似合わなさすぎるのですが。

なにこの月とスッポンみたいな関係!


「ここはすばらしきおもてなしをするやしきだとおききしました」
「…えっ、あ、っと。素晴らしきおもてなしですか?私なんにもしていませんけど…」

バラが似合いそうなほど綺麗なその人は私をじっと見つめ瞳を細くしながら軽く微笑んだ。

うわっなにこの別嬪!
今の微笑み何カラット!?
どれくらいのお値打ちモノですか!?(某漫画のデジャヴ!?)



「おもむきのあるいいやしきです」
「あ…ありがとうございます!巷では次の台風あたりで倒壊するという予想ですけど…」


って私は何言ってんだ!馬鹿アア!


「それはしきゅうほきょうしなくてはいけませんね」


そんな私の発言にも優し過ぎる受け答えを…っ!





というか玄関の真ん前でずっと立たせたままは疲れるよね。
と思ったら善は急げ

「よ、よければ上がっていきますか?お茶やお菓子用意しますよ」
「なるほど。むいしきというものですか」
「え?」
「いえなんでもありません」

言葉のキャッチボールがうまくいかないというか、私が馬鹿なだけというべきか…。
なんでもいいけどお客様が来るなら掃除しておけばよかった。
こんなときに限ってなんでクモの巣はってるのー!?馬鹿じゃないのー!クモ屋敷かここは!








ていうかこの人何者?
男か女かも分からないほど美形なんだけど。
今更名前聞こうにも緊張するし…

そんなふつくしい人と向かい合わせで座り「ど、どうぞ」と目の前に置いた食べ物を進めてみる。


「こちらはなんですか?」
「えっと、ヨーグルトです」
「よーぐると?」
「ヨーグルトは菌を発酵させればできる簡単な…んんっ、言っても理解はし難いかと」

テーブルに置いたヨーグルト。
それを説明できるほど私自身わからないんだよなぁ。
あははと笑い適当にごまかせば、にこりと微笑んでくれた。もういいや。この人が何者でも構わないよ。

ふつくしすぎます。



このふつくしい方がスプーンを手に取り、白いヨーグルトをすくう。
いただきますね、と律儀な一言を付け加えてくるものだから思わず首を上下に振った。口に含もうとしたときガタッという音がどこからともなく響いたと同時に私の視界に映るふつくしい方目掛けて飛んできた物体。





「謙信様っ!」
「うおっ!」


びびび…!ビックリした!

空から降ってきた…!?
正確にいうと屋根から?よくわからないけどまるで忍者みたい!


「おや。かすがではありませんか」

け…謙信様と呼ばれたふつくしい方は得に驚いた様子もなく、いきなり現れた彼女の名を呼んだ。


「何を悠長なことをおっしゃられているのです!かすがは心配いたしました!」

豊満な己の胸に手を当て悲痛な胸の内をあげた、かすがと名乗る女性。
な…なんてスレンダーな体。つかグラマラスすぎんだろ。いやいやいやなんてコスプレですか。
亀仙人喜ぶって絶対!それより私にください胸を!



………なんて口に出しては言えないけれど、じっとかすがさんを見ていたら睨まれてしまった。



「ここのかしというのはすばらしいとひょうばんだったのであしをはこんでみたくなったのです」
「…ここ、そーいう場所じゃないんだけどなぁ」
「ではどんなばしょなのですか?」
「あ、いや。ぶっちゃけ特にないですけどね。あえていうなら私医術の方を学んでまして、皆の役にたてたらなと。そんな仕事しています」
「ほう。それはすばらしいですね」
「あ、有り難うございます!」

また褒められたー!
謙信様に褒められるのすっごく嬉しい!
なのに!かすがさんが私の方に黒く光るクナイを向けてきた!


「貴様!謙信様をたぶらかす気だな!」
「ええ!!?」
「かすが」

謙信様が彼女の名前を呼べば何か言いたげだった口をつぐむ。
飼いなされた犬みたいだかすがちゃん。
謙信様がおてって言ったら絶対やりそう!

「ジロジロ私の顔を見るな」
「ご、ごめんなさい。……あのー、綺麗なお姉さんも一緒にどうですか?」
「見るからに怪しい食べ物だなそれは」
「体にとても良いんですよ。毎日食べるとより効果を実感できます」
「それはそれは…いいはなしをききました。のどのとおりがよくいいあじでした。これならばあきもこないきがします」
「けっ謙信様!お食べになられてしまったのですか!?」

謙信様はさらに此処に興味を持ったと言えばかすがさんはもう来させませんと反発する。
家主を目の前に言い合う二人。
なんだか見ているだけなのが辛くなって「すみません」と割って入ってみた。


「えっと謙信様、かすがさんは貴方のことを心配していることよくわかりました」


そりゃもう痛いほどね。


「だからかすがさんが大丈夫だと判断してくれたらまた足を運んで下さい。お二方ならいつでも大歓迎ですよ」


二人でじっくりどっぷり納得のいくまで話し合ってください。
それから来てくれた方が私としても嬉しいからね。


「よかったら今日はお土産にヨーグルトをたくさん持って帰ってください」


こちらとしては会えないぶん、謙信様が絶賛してくれたヨーグルトを渡せれば満足だ。
昨日たくさん作っておいてよかったー。


「それに私、同年代ぐらいの女友達少ないから、いつかかすがさんとはお友達になりたいです」

無理には言わない。
いつでもいいから何年かかってもいいから、怪しい私を認めてくれたらいいな。



「謙信様はとても綺麗ですもんね。かすがさんが神経質になる気持ちがよくわかりますよ。私が触れちゃいけないと思うくらいです」




ガシッ


「話のわかる奴だなお前は!」
「えっ」




風来坊から聞きし噂
(ふしぎなかたにふしぎなばしょです)
(此処は確か…佐助が言ってた家じゃないか?)




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