えーと。

なにをすればいいのかな。




なんかね私、今


少年にじっと睨まれています。






なにこれ。
私動いちゃいけないのかな。
すっごく動きづらいんですけど。




むしろなんで男の子に睨まれてるの?



ただこの少年が「いつきがどーのこーの」って言ってるからいつきちゃんの知り合いなのかなと思うんだけど…。





「えっと、君はいつきちゃんのお友達なのかな?」
「な、なわけねーだろ!こんな農民が俺のダチなわけねーし!」


うわっ怒った!

どうしよう!


私の言い方が悪かったかな!?



「俺は信な……いや!なんでもねえ!兎に角俺は下々の農民じゃねえから!!」
「……はあ…さいですか」

農民こっぴどく否定って……君まだ若いのになぁ。
でもそんな農民嫌い(?)な子が農民の鏡だろういつきちゃんに何の様だろう。



「こらー蘭丸!また農民を馬鹿にしたな!?おら、友達のおめーでも農民馬鹿にしたら許さねーだよ!」

そんな中、彼の求めていたいつきちゃんが顔を出した。
やっぱりこの少年はいつきちゃんのお友達みたい。蘭丸君っていうのか。

「なんでこんなとこいるんだよいつき!今日も勝負しようぜ!お前と俺どっちが強いか!」
「あー…悪ィけど今日はダメだ」

いつきちゃんが却下すればどこか嬉しそうだった蘭丸君はピキリと氷のように固まった。

「姉ちゃんとゆっくりするだ」
「はー!?なんだよそれー!!」

大切な玩具を取られてふて腐れたという表現がよく似合う。
なんか出会ったとき以上に睨まれてない?
なんだかすっごく謝りたい。悪いことしてないけど。

きっと蘭丸君にとっていつきちゃんは大切なんだろうね。


「私なまえっていうんだけど、蘭丸君も一緒にお茶とお菓子どうかな?たくさん余ってるからね」
「そりゃいい案だな!蘭丸っ有り難く上がってけ」
「……困ってんなら手伝ってやってもいいぞ」
「そうそう。助かるなぁ」

なるほど。
これが所謂ツンデレかぁ。
この若さで随分と究めたもんだね。

「おいお前、なんか余計なこと考えてるだろ」
「えっ!あ…いやいやいや!そんなことないよ!」

なんて察知のいい子…
余計なこと考えられないな!











可愛らしい子供達に癒されながらのほほんとした会話を繰り広げる。
たまについていけないような話もあるけど、楽しいなー。いいなー若いっていいなー。青春だなぁ。青い春だなー。
まあ私も一応若いんだけど



二人の会話を聞きながら湯呑みに手をつけたのだが、知らない間にお茶を飲み終わってしまったようだ。


「あ、おらお湯沸かしてくるな!」

それにいち早く気づいたいつきちゃんは立ち上がる。
湯呑み三人分をお盆に置く。


本当にいつきちゃんは気が利く子だなー。…って客人になにやらしてるんだろうか私!なに浸ってるの私!

はっと我に返ってみるけどそこにはもういつきちゃんの姿も湯呑みもない。
出遅れた確定みたいでいつきちゃんは台所にいるだろう。

…そうなれば自ずと私と少年が二人きりになるわけで。
目の前にはじっとこちらを睨みつける蘭丸君。
……。この状況をなんとかするべくニヘッと笑って見れば「気持ち悪い笑い方だな」と言われた。ひどい!

「それにしても二人は仲良しだねー」
「友達じゃないからな!」
「…」

もうね、どんなに否定してもね、蘭丸君といつきちゃんは友達だよ。大丈夫。君が認めなくても第三者は認めちゃうから。
むしろ蘭丸君、いつきちゃんのこと好きだろ。まじで。好きな子ほどちょっかい出したくなっちゃうみたいな。
なにこのウブ加減。

「じゃあさ、蘭丸君にとっていつきちゃんは?」
「…こっ好敵手だ!」
「ふーん。そう」

「あ!お前今丸を馬鹿にしたろ!」
「し、してないよー。ただ喧嘩するほど仲が良いっていうしね」
「棒読みだぞ!?」

なんて子供だ!
受け流しも棒読みもバレるだなんて!




「…んー、あっそうだ!最近ねいつきちゃんお花に興味があるんだって。それでね、花ってその種類によっての花言葉があるんだよ。例えばヒヤシンス、しとやかな可愛らしさ。フリージアは無邪気、タンポポは…飾り気のなさ」
「は、お前なに言って…」
「リナリアは私の恋を知ってください」
「………リナ、リア…?」
「なんてねー私の独り言。でもいつきちゃんにあげたらきっと喜ぶんだろうなぁ」
「……」

黙ってしまった蘭丸君に笑いかける。
そんな私の視線に気づいたのか蘭丸君は顔を真っ赤にして「な、なんだよ!」と怒鳴ってきた。


「待たせたな……ん、二人してなに話してただ?」
「なんでもねェよ!」
「あはは。蘭丸君の好物を聞こうとしてたの」

お茶を持ってにこにこと現れたいつきちゃん。
それにビックリして慌て叫ぶ蘭丸君と適当な話題を流しておく私。




「蘭丸はなぁ、こんぺいとうっつー菓子が好きだぞ」
「へー金平糖。あれ美味しいよねー私も好き」
「な、なんでお前が知ってるんだ!?貴重なんだぞ!」
「姉ちゃんは何でも知ってるだよ」

ねーと顔を傾け笑い合えばまた蘭丸君が羨ましそうにこちらを見る。


「なんだ蘭丸。そんなふて腐れた顔してどうしただ?」
「大丈夫大丈夫。私のことは気にしないで敵じゃないから!子供の青春は邪魔しないって!」
「蘭丸は子供じゃないぞ!」
「わかったわかった。蘭丸君は大人だねー」
「なっ!やっぱり馬鹿にしてるだろなまえ!!」
「あ」
「な、なんだよ…」
「名前呼んでくれた。嬉しー」
「はっはぁああああ!?」

可愛いなオイ。
めちゃくちゃ可愛いな。




ダン、といきなり立ち上がった蘭丸君。


「帰る!勝負する気分じゃなくなった!」

ずんずんと足を歩め玄関の扉を思いっきり開いた。
それを慌てて追いかける私。


「ら、蘭丸君っ待ってえええ!」
「なんだよ!」

振り向いた蘭丸君の手を取り、その手の平に大きな葉でくるんだ包みを置いた。
突然のことに蘭丸君はわけがわからないという表情で私の顔を見たので一度笑いかけて言葉を繋ぐ。

「お家の人にどうぞ」

中身は私お手製の団子。
蘭丸君の家族構成もわからないからなるべく多めに入れておいた。

「もしもよかったら、だけどね」

農民を下手に見てるようだし家の人が食べてくれるかはわからない。

だけどこれも何かの縁。
一緒にお話してくれたお礼。

「あっ、私の手作りが嫌ならさ少ないけど金平糖あげるよ」
「…」
「だからまた来てね蘭丸君!私、今日すっごく楽しかったよ!」
「そんときは姉ちゃん困らせるなよ!また遊ぼうなっ」

隣でいつきちゃんが笑い蘭丸君の肩を叩く。


「リナリア。いつか渡してあげてね」
「なまえ姉ちゃんなんだべそれ」
「今は秘密ー」

そんな私達をじっと見たと「ケッ」と吐き出したと思いきやこちらに背を向けて走り去ってしまった。




ちょっとあからさま過ぎたかな…
と反省していれば離れた場所から聞こえてきた蘭丸君の声。




「なまえーっ!お前になんか負けねーからな!」





えっまさか私、恋のライバル!?



生意気な女
(今のままじゃ勝てる気がしない)



「き…嫌われたかな」
「そんなことねェべ。本当は嬉しいに決まってる。あいつはそういう奴だからな」


◎あれ、なに…これ?ゆめ?



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