「ゲッ、てめェらは…!」

苦虫を潰したような顔をする訪問者。
何もしなくても整った隻眼の美形青年が思いっっきり顔を歪め自分の視界に写るモノを嫌悪していたと思う。

またそんな彼を見た二人も驚いた様子で身を乗り出した。

「政…!」
「藤次郎君だ!いらっしゃい」

「「!?…と…藤次郎くん??」」

えっ?
と幸村君と佐助さんが私に不思議な顔を向けてきた。そしてそのまま藤次郎君の方へ移し彼らは視線を合わせただひたすらに固まっていた。


そんな雰囲気がよく分からない私は玄関の扉を開けたまま固まる藤次郎君の元へ向かう。

「今日はどうしたの?」
「…いや、最近ここらに賊が出るらしくてな」
「賊?」
「ああ。何かあったらじゃ遅ェから一時的に村にでも隠れとけ。気をつけろよ」
「……。うんわかった。いつも心配してくれてありがとう」

確かに私の家は村から離れているし気をつけなければね!鍵しておこう鍵。





「へ〜それだけの為に来たんだ?」

そんな私達を佐助さんはじとっとした目で見つめていた。
佐助さんにまけじと睨む藤次郎君。

なんだろ。
この二人からまがまがしいオーラを感じるぞ。

「ま……と、藤次郎殿はなまえ殿と知り合いなのですな」
「そ、そういえば皆も知り合いなの?」

この妙なオーラを幸村君の一言が打ち砕いた。
すかさずそれに便乗するべく私も声を出せば互いに「まあ…」と曖昧な返事だったけど肯定していた。
どうやら三人は知り合いみたいだけど変な反応。
どことなく仲悪いようじゃなさそうだけど…。
それにしてもこんなところで会えるなんて世界って狭いね。


藤次郎君もせっかく来てくれたのだから一緒にお茶をしようと誘う。
私と視線を合わせそして二人を見遣り「勿論だ」と言い切った。
…どうしたの何だかいつもと言い方が違うよ藤次郎君!

「此処はいつも変なモンがあるからよ」
「確かに。このていぶる?とやらも不思議でござる」
「南蛮のモンらしいぜ。なまえは正座が苦手だから下を削ってあるんだと。“全員正座が出来なくなればいい”ってな」
「…う。で、でも冬になったら布を被せて暖房にもなるんだよ」

まさか(私だけの利便性を)カミングアウトされるだなんて(事実だけど)予想外!
いやでもそれ以上にこたつが好きだもん。ミカン最高だもん。
あの暖かさといい気持ち良すぎてぬくぬくして抜け出せなくなるのが欠点だけど。



「なまえ殿は南蛮に詳しいので?」
「…んー、まあそんなとこです。この日ノ本には私の求めるモノが足りないので」
「なんと素晴らしき向上心でございますな!某も見習わなければなりませぬ」
「いやいやただ自分勝手なだけですよ」

向上心とかそんな優しいものじゃない。
未来の便利さや懐かしさが忘れられないだけのただの傲慢でしかない。
それは自分自身が一番わかってる。

だからそんなキラキラした目で見ないで下さい幸村君。
罪悪感でいっぱいになります。

「いつの間にかNew…新しいモンを取り揃えてたりするんだぜ。このCakeだってそうだ。Honey,いつの間に覚えたんだ」
「ハニーじゃありません。まだ残ってたんだから今日は許してくださいよー」
「何か珍しいことをするときは俺に連絡をしろって。本当に油断ならねェ」
「えー。だって連絡手段がわかりませーん」
「なら俺が来るまで待て」
「私は犬じゃないですから無理デス」
「減らず口がー!」
「いっいひゃいー!」

むにっと摘まれた頬。
なんてデジャブを感じる痛みなんでしょう。
くそうこの藤次郎君め!
その美形を歪ませてくれるぅぅ!
やられたらやり返すのが私のモットー!(今決めました)

「まさ…っ藤次郎殿!女子の頬になんてことを致すのだぁああ!」

それを見ていた幸村君の声も聞こえてくるけど今はそれどころじゃない。
離せば負けだ…!この手を離しては負ける!







「はーん。藤次郎君さぁ、もしかすると竜の右目に内緒で来てるってわけー?」

そんな私達を、いやむしろ藤次郎君をピタリと止めた佐助さんの声。
まるで石化の魔法にかかったかのように固まりギギギと錆び付いた鉄の如く首を動かした。


右目?
竜の右目って何?

藤次郎君がそのまま摘んでた私の頬を離したものだから私も彼の頬からぱっと手を離した。

「!、…猿、てめェ言うなよ絶対に言うなよ」
「えーそれは言えってこと?」
「(…これはまさかのダチョウ展開?)」

…よく分からないけど藤次郎君にとって絶大な効力を持っているみたいだ。

焦っている藤次郎君の顔は珍しいなぁ。
なんて思いながら、ふと佐助さんの湯呑みが視界に入った。残りが少ない。それに気づいて即座に行動に移す。

「佐助さん、お茶入れますね」
「お。ありがとー気が利くねぇ」

だってそのくらいのことしかできないんだもんねー。




藤次郎君とは違ってほわほわした雰囲気を纏う佐助さん。
やっぱりこの人は何か凄い。得体の知れない何かを持ってる気がするんだよね。


「ちなみになまえちゃん。その“君”と“さん”の違いとは?」

ふと問われた何気ない質問。
このメンツじゃ佐助さんと幸村君に藤次郎君。つまり佐助さんだけ呼び方が違うので不思議に思ったんだろう。

「私より年上か年下かが基準かな?まあ気分にもよるけど」
「…は?お前俺より年上なのか?」
「たぶんね。私ハタチだもん」
「某より年上で御座るうううう!」
「ちょ、旦那人様のお家では静かにっ。うるさいよ!」


……。


どうしよう。
なんか彼らが妙に眩しい。
一緒にいるのに皆と私の間には透明なフィルターがあるみたいだ。

私ってばいっつも今更だけどさ、この世界イケメン多過ぎじゃない?
何がこの世界をそうさせたの?この地に住まう乙女達が願ったの?むしろ私が願ったかもしれないけど。
でもこれは稀にみるイケメン発生率だよ!街中歩いてても早々見つからないって!


「…なんだかねぇ君達が格好良すぎるんだと思うんだよね」

比率おかしくない?
イケメンに無理矢理私が紛れ込んでるみたいじゃん。
私家主なのに。
場違い。みたいな…あれ、なんか悲しいぞ


これが所謂私のようなパンピーを寄せつけない(むしろ近づけない)イケメンフィルターってやつですか。



「はっ破れ…っぶ!「独り言とはいえ破廉恥だねえ」
「…そういう奴なんだよ」

はあ…と小さなため息をつきボソリと呟いた言葉を彼ら三人が聞いてたなんて私が知るはずもなかった。




彼女の言葉に罪はなし
(イケメンと友達になりすぎたろ私!)



(いやあ、まさかあの独眼竜がねぇ)
(はっ破廉恥でござるううう…!)
(こいつは何呑気に男あげてんだ)




◎詰め込みすぎた。話がとびとび…!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -