結局さ、なんか、ご帰宅させてもらえなかった。
この結果になまえは非常に汗っ…焦っていた。衣食住は任せなさいとシンサマさんに言われながらも、そんなものの保障はいいから帰してくれよ帰れば全て揃うからと必死に説明しようにもわかってもらえない。理解をしてくれなかった。頭のネジが外れてしまった人間というのはこんな奴らなのかと改めて実感した。あいつらアホだ絶対アホだろ。そんななまえ自身は、彼らからバカだと思われているのを知りもしない。

しかしこのままではさすがにマズイ。
けどこんなところご近所にあっただろうか?なまえは自分の家のまわりにこんな場所があるなんて見たことないし聞いたこともない。ならば私は無意識に遠い所に来てしまったのかもしれない。…夢遊病でそんな場所に行くかよとツッコミをしたいけど、深く考えたら取り返しのつかないことにならそうだからやめておいた。いや現時点でもう取り返しついてないよね。やばいこれはやばい。家に帰れないとかどういうことなの。家族みんな心配してない?警察とか呼んでしまうんじゃないの?テレビとか週刊誌とかが黙っていないよこんなこと!
もしも警察沙汰になったらここにいる人達は捕まってしまうということだ。誘拐、強要、その他諸々な罪で逮捕になるのか?…な、なんだか急に可哀相に思えてきた。だがしかし。彼らは一度しょっぴかれてもいいと思う。そうでもしないと自分のした過ちに気づかないだろうし。それがこの人達の為になる。きっとそうだ。
よくわからないけど彼らは善意で私をここに置いている的な雰囲気を醸しているから何だかもどかしい。そしてなんて有難迷惑な善意なことでしょう。

「急におとなしくなったねなまえ君。落ち着いたのか」
「もともと落ち着いてるんですがね。……ちなみにあの、ピアスの人って、」
「ピアス?あ、ああ…マスルールのことかな?普通彼の特徴といえば赤い髪とかいうのに不思議な観点だな君は!ハハハ」
「っい…痛い背中を叩かないでください。中の物を吐きそうです。ううっ…マスルールさんが優しかったので私、ここにいる間はマスルールさんについていきます。もうやだこわい」
「な、何故懐かれたマスルール!!説明してもらおうか!!」
「…知らないっすよ」

ピアスの人はマスルールって名前なのか。初めにシンサマさんが紹介してたけどあれだけで覚えるわけなかろう。ジャーさんは炊飯器で覚えただけだし。とにかくみんな覚えにくい。何度聞いても横文字は覚えにくい。クソッ!マーさんとかマーくんって呼んだら怒られるかな。やばいなんか野球したくなってきた。
マスルールさんの背中に隠れホッと一息。視線を上げるとシンサマさんがマスルールさんに取っ掛かる姿が見えるけどマスルールさんが上手い具合に受け流している。イイヨイイヨーこのままガミガミ言い合っちゃってくださいよ。
この隙にさり気なくすっといなくなれればいいけれど……無理なことは十分にわかってる。わかってしまった。爽やかな微笑みを向けてくるジャーさんから尋常ではないオーラが留まることをしらない。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -