今ならソーメンを讃えてもいいかもしれない。そんなことを考えつつ、目玉以外の料理をちゃっかりがっちり頂いちゃいましたね。そんななまえの大食らいな姿を三人は唖然とした表情で見ていたなんて知らない。しかもそれがよほどお腹を空かせていたんだなと思われていたなんて知りもしない。


「そういえばあの時君はどうして浮いてたのか教えてくれるかな」
「それは私が聞きたいですね」
「自分でも知らないうちにかい?」

思い起こしてみてもなまえには意味がわからないからここは素直に肯定しておいた。…質問ばかりで面倒だったとかそんな安直なワケじゃないよ。うん。……うん。

「君は一体どこから来たんだい?」
「…なんというか、私こんなところに迷い込んだ記憶がないですけどね。今すぐ帰りたいんですけど」
「帰りたいんですか?この王宮に紛れ込みたいの間違いではなく?」
「は?」
「は?」
「…ゴメンナサイ」
「ジャーファルやめなさい。なまえ君が困ってるじゃないか」
「すみません。ついカッとなって」

ほんとなに。なんなの。そばかs…えーと…ジャーさんのあの冷めた眼差しは。何を怪しんでいるのだろう?心が砕けそうなんだけど。全身複雑骨折しそうなんだけど。

というか王宮って…何、こいつらどこのお坊ちゃんだチクショウ…。そんな場所日本にあるのか。知らなかった。日本にはまだ私の知らない未知の建造物があるということか。

「じゃあなまえ君はどこに住んでるんだい?」
「キッタネエ豚小屋の中です」
「え?豚小屋?」
「はい」

よく豚小屋って言われるなまえの部屋。お母さんに何度片付けろと怒られたかわからない別名樹海の部屋。でもそれだと豚にも失礼ね、と言い放ったお母さんのドヤ顔を思い出して無性に腹が立った。上手いことなんも言ってねえから。この性格はお母さんに似たに違いない。ママン、これは抗えない血脈のせいなんだよ!



…?はて。シーンと静まり返り空気が重くなったのは気のせいだろうか…?いつの間にかシンサマがなまえの傍に立っていた。彼が辛そうな表情を浮かべ切なげに言葉を発したときなまえはただ意味もわからず顔を歪めるしかなかった。なにいってんだコイツ…


「辛かったね」
「」


え?なに?
どういうことなの?

ポンポンと頭を撫でられる感覚。ヤベエエエ!イケメンに撫でられてるww撫でられておるwwwwお…おちけつ……落ち着けワタシ…

「君はそこから抜け出してきたのか」
「??…そ、そうなんですかね?この歳で夢遊病起こしちゃった感じですかね?…うわああ言っててなんか悲しくなった。すみませんもう恥ずかしいので帰ります。家に帰りたいです」
「無理しなくていい。無我夢中で逃げて此処に来てしまったんだろう?独特な召し物まで着けさせられてるし、もしかしたら君は君自身が知らないだけでその部屋にいなければいけないほど特異な存在なのかもしれないな。よく逃げてこれたね。なまえ君は頑張ったよ」
「えっ」

なに、なんで、この人なんの話をしているんです?!?!
さすがにワケがわからなくなってきた。料理恐ろしいし話噛み合わないし皆外人だしとっとと家に帰ろう。いま無性にお母さん特製の卵かけご飯が食べたい。ソーメンはやだ。

「あ、あの。ご飯ご馳走様でした。それでもって出口はどちらですかね?ほんとすみませんすぐ帰りますんで。お邪魔しました」
「どこに帰るっていうんだい」
「家、ですけど?」
「それは豚小屋にかい?」
「他人に豚小屋とか言われると心が痛む死にたい。…いやでも帰らないとあれでも心配するし、怒られちゃうんで」
「なおさら帰すわけにはいかないな」
「えっ……こ、困ります」

誘拐宣言ですか!!?シンサマさんんん!?!?匿おうとする気ですかね!それは犯罪ですよ!それとも食べたご飯代は働けよってか!?!?食べ過ぎたから怒ったの!??

「何も怖がることないさ」
「いや警察沙汰になりますんで。今なら聞かなかったことにして円満解決して帰りますから」
「嫌だ。なまえ君はここにいなさい」
「は」
「大丈夫、ここにいれば安全だ」

いや帰せよ!何が安全だアホンダラ!



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