お腹空いた。確かに、なまえがお腹空いたから食事を取らせてもらうことになったのは事実だ。でも何故。この展開は予想をしていなかった!
白いテーブルに施される装飾も、今までテレビでしか見たことないような豪勢な料理が並ぶ。それにこの広大な敷地はなんだ。一体なんなんだ。この人達の生活レベルは庶民じゃない。

成り行きに任せたまま呆然とイスに座る私はきっと生気すらない筈だ。綺麗なお姉さん方が料理を運んでくるのを見て何度も絶望した。ここには外人しかいねぇのかクソッ!


「こちらメダマトビ・デ・タイになります」
「えっ」
「メダマトビ・デ・タイです。こちらの特製タレにつけて食べるとより美味しくなりますわ」
「あ…そ、そうなんすか…」

聞いたことない料理名。なんだこの魚…名前の通り目玉が飛び出てやがる。
「遠慮なく食べてくれ」と向かいに座るシンサマさんが薦めてくれる。目玉が一番美味しいんだよななんて言うのは完全に聞いてなかったことにする。いや…目玉っていうかなんか全体的に色鮮やかすぎて食べたくないです…なんてことなまえには言えるはずもなく。

「美味しいか?」

口に運んでその言葉に頭を縦に振った。
やけくそに食べはじめてみたら案外美味しいことに気づいたのでもう色は見なかったことにする。目玉は無視。見なきゃ美味しい。どんな魚かなんて気にするな。魚は魚だ。深海魚とでも思えば大丈夫だぞ私。いや深海魚も変わんねぇよ超こえーよ


「遅くなってしまったが改めて君の名前を聞きたいな」
「…………なまえです」
「なまえか!いい名前だな」

爽やかな表情で微笑む姿は効果抜群で思わず顔を逸らした。ケッ私をオトす気かこのイケメン野郎。そんな手に乗るかよ的な勢いでスルーしておいた。断じて褒め慣れしていないとかじゃないよ断じて。
むしろご飯食べてる最中にさっきの三人からジッと見られていることが気に障るなとかなまえは思ったりするわけで。


「ところでさっき言ってたソーメンって何だい?」
「ごほっ」

なん…だと…?
次は何を聞いてくるかと思えば国民的代表のソーメンを知らないですと?いやいや無理もないか。こんな豪華な屋敷に住んでいることだし庶民に絶大な人気の手軽なソーメンは買わないっていうかそれが存在してることも知らないとか。有り得る。ここならきっと有り得る。

「なまえ君大丈夫か?」
「すみませんお構いなく」

可哀相に…!あんなに美味しくて簡単なソーメンを食べたことがないなんて!でもだからって毎日続けざまなあのソーメンラッシュは勘弁してほしいけどね。あれは飽きる。毎日のやる気を削がれるからね。

「ソーメン美味しいんですよ。白い麺をそばつゆに付けて食べるんです」
「さっき嫌だと叫んでなかったか?」
「ソーメンが一度始まると在庫が切れるまで続くんですよね。あの飽き加減は異常すぎて…」
「へえ食べてみたいなぁ」
「あ、この食卓には似合わないからやめておいた方がいいです」

ソーメンよりどうぞ豪勢な食事をしてください。こっちの方が貴方達にはお似合いです。ソーメンの白だけとか間違いなく質素でしょうに。めんつゆなんて茶色だから貴方達には似合わないですからねきっと。カラフルな君達には君達に似合うカラフルな食べ物を食べるといいよ。庶民的な私にはソーメンが一番似合う!ソーメンおいしいよ!!べ、別に自分で言ってて悲しいとかそういう意味じゃないからね!泣いてなんかないやい!



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