ねえちょっと聞いてくれよマイケル。最近我が家の食卓に並ぶのはいつもあれなんだ。そりゃあさ支度が楽かも知れないけどいい加減やめて頂きたいよね。…え?あれってなんだいって?
ほらあれだよ。察してよ。細くて白くてつるつるしてる麺だよ麺。めんつゆにつけて頂く庶民の味方ソーメンね。しっかしいくら美味しかろうと今日もソーメン。昨日も一昨日も。毎日毎日まいにち、

「もうソーメンなんか嫌だああ!!」

ガバアッ!
ま、まさに悪夢だ!ガツガツの肉が食いたいと願い夕飯に向かうも、食卓には白くてやわやわしたそれしかない。伸び盛りなのに(特に胸が)そんな仕打ちはないよステファニー!つーかいい加減マイケルとかステファニーって誰だよ!自分もわかんねーよ!

「はっ!」

そこでなまえは気づいた。目の前に広がる布団。ど…どうやら。あれは夢、だったらしい。なんてせつない夢なの。
ハハハとどこからか笑い声が聞こえてきたので、寝ぼけたまま周囲を見渡せば三人の男の人が視界に入った。……は?

「……お、お見苦しいところを…すみません」

見られていたなんて恥ずかしい。突き刺さる視線が痛くてそそくさと布団の中に篭る。まてまてまて落ち着け。落ち着けワタシ。夢、か?これも夢だよね。わーびっくりした。もう一度寝よう。…アレ、これ自分愛用の布団じゃなくね。ベッドじゃね?なんか、こう…全体的に違くないですか。………………やっぱりちょっと待て。ここ何処よ。
恐る恐る被った布団からなまえは覗き込む。見覚えのない、庶民育ちのワタクシには縁のない景色だった。そして自分を見ている人達。うーわ、なんかよくわからないけど視線が痛いね。こっちみんなクソが!

「やあ。ぐっすり眠れたかい?」
「………いや、なんか上手く寝れてないみたいっすね」

ハハハと軽く笑ってじゃあお休みなさーい…と寝る体制をとればガバアアと布団を引っぺがされました。

「貴方いい加減に起きたらどうですか!」
「ギャアアア!」

どうやらそばかすが印象的な青年がキレたらしい。何故!?私まだ何もしていませんけど…!

「こっちは貴方が起きるのを待ってたんですよ。この状況でなぜ二度寝しようとしてるのですか!」
「…えっと、目覚める為ですかね?」
「逆ですよ逆!!」

それじゃあ寝る体制でしょうが!と唸るそばかす君。布団を剥ぎ取られて隠れる場所もなくなったなまえは周囲を見渡したあと枕しかなかったからそれを抱えて平常心を保つ。

「まあまあ落ち着けよジャーファル。このお嬢さんも困惑してるんだよ」
「シン様…しかし、」

そばかす君を宥めるのは青紫色の髪をしたチャラそうなイケメン。ていうか様?…様って…。いやきっとシンサマって名前なんだろ。…アレ、というかこのイケメンどっかで見たような。なんだっけ。あ、私この人と宙を浮いてた記憶があるぞ?となまえの脳裏に微かな記憶が蘇ってきた。最後に落ちた気がしたけども。なんかやだなそんな記憶。

「私の部下が申し訳なかったね。彼はジャーファルというんだ」
「ジャー…?新しい炊飯器か何かですか」
「は?」
「あ、いえ…すみません」

冗談さえ通じない…だと…。驚愕のあまり悶絶しそうになった。というか炊飯器で首を傾げるとか何事。知らないの炊飯器…

「そして彼も私の部下のマスルールだ」
「どうも」

うわあ…聞いたことない名前ばっか。思わず顔を作ることすら忘れ真顔で返してた気がする。日本人っぽい名前がないとかね!いやむしろみんなこの容姿で日本人なわけがないよなぁとなまえは思う次第で。じゃあ炊飯器もわかるわけないかと解釈しておいた。
それでもいきなりの異文化交流は恐ろしい!恐ろしいね!!!?!?


「…。君、私のことは覚えているかい?」
「あ、あの時はどうも。えっと、」
「シンだよ、シン」
「あ、ああ…そうそう。シン、サマ?さんですね。記憶力なくてほんとすんません」

あれは夢のまた夢的なものじゃなかったようだ。たぶん。いやきっとこの人に助けられたのだと思う。この人否定もしてこないし。
少しの沈黙にいたたまれない気持ちになってなまえの視線は宙を漂う。興味本位でちょーーっとだけ視線を向けようとすれば目が合ってしまうのは確認済みだ。クソ!マジでこっちみんな!


「貴方、なぜ目を逸らすんですか」
「いやあ…癖でしょうか?」
「一体なんの癖ですか」

ジャーファルさんのツッコミが実に素早くて感動する。イケメンと顔を合わせると自分の顔が歪むので…なんてことは言えません。変人にしか見られないオチは私的にいらないのでね。

「貴方何か隠し事でもあるんじゃないんですか?」
「そ」
「ここに来たのは何か目的でも?」
「」
「あくまでもシラを切るつもりですか」
「……ちょ」


いや私が発言する前に切られてるんですがね。…まあ今はそんなことよりお腹が鳴りそうだ。違う。ダメ、もうなまえの限界だった。……緊迫感漂うこの部屋中に盛大な腹の虫がこだました。



やだ恥ずかしい死にたい…


「…なまえ君、とりあえず食事でもどうだい?」
「オネガイシマス」

意味わからずどうしようもないけどそれよりまず、背に腹は変えられないとは正にこのこと。とりあえず私は!腹が!空いたのだ!



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -