ヤムライハに引っ張られ押し問答しながらも、なまえ君は半ば強制的に視界から消えていった。いきなり女の子がいなくなるとムサイ。この空間がひどくムサイぞ。


「で?シャルルカン、なまえ君はなんで泣いてたのかな」

聞かずともなんとなく予想はついてはいるが。まあ七海の女ったらしとして、女の子の涙は無視できないだろう?……一体どういう訳かあの子なかなか俺に懐いてくれないが。いや、逆に考えてみよう。きっと彼女は接し方がわからず恥ずかしがっているだけだ。ちょっとシャイな子だからな。まあ本人はシャイじゃないと言い張っていたが、それも照れ隠しで間違いないだろう。きっとそうだ。

「なまえがここは何処だっていうからシンドリア王国って言ったんですけどその時点でもう泣いてました」
「そうか」
「あ、それと…なんだったかな、ニホンって知ってるか?みたいなこと聞かれました。なんかよくわかんなかったですけど」
「ニホン?…彼女はたまに意味のわからない言葉を使うよな」
「どこかの国でしょうか?マスルールは知ってますか」
「いや知りません」

彼女の故郷の名前か?七海の海を冒険した俺でも聞いたことのないものだ。顔つきからして煌帝国あたりの気はするが…

「シン。いくら保護を目的としていても具体的な期間もなく、このままずっと王宮のタダ飯ばかりでは他の食客に面目が立たなくなりそうです。あの子よく食べますから…」
「そうだな。何か手伝わせようか。ジャーファル、彼女は文官として役に立ちそうか」
「今の段階では答えようがありませんね。というか彼女、文字読めるのでしょうか」
「渡した本はまだ読んでないと言っていたが…あまり得意ではないのかな」
「それも有り得ますね」
「…。念のために聞くがシャルルカン、武官は向かないか」
「あいつ運動音痴っていってましたよ。走ってたとき完全にニブそうでしたね」
「…………困ったものだ」

役立ちそうな役割がない。
ため息しか出ない。


「ならばいっそ俺の娘に――」
「なにいってんだこいつ」
「ジャーファル君、王様に向かって今なんつった」
「なにいってるんですか我が王よ」
「違う絶対違う!」
「いつもの聞き違いでしょう…?」
「いつもの?いつものってどういう意味かなジャーファル君説明してもらおうか」
「…」

何故黙る。おい


「……話戻しますが娘なんて問題外ですからね。そんなことしたら国民からなんて思われるか…」
「ただの冗談だって。まあ、なまえ君に関していろいろと思うことはあるが一番気になるのは彼女が何かを隠してることだな」
「…シンもそう思いますか?彼女は他国の密偵でしょうか」
「いや…あれを送り込むのはないだろう。性格然別なかなか手強いぞ」
「ですよね」

いろんな意味で。本当にいろんな意味で。俺でももっと他の無難な人選をするぞ。
まあ、わからないものを考えたって今は仕方ない。できることを先に片付けるのが先決だ。

「保護もそうだがヤムライハの言ってたなまえ君のルフも気になるからな。他の者に嫌悪されないために配慮はしよう。それに俺達がささっと豚小屋とやらを特定すれば何も問題ない」
「それがまったく見つからないのが今の現状なんですけどね」
「………困ったものだ」

本当に。



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