羞恥心で死にかけた。もう死んでもいいかなと思った。この歳になってこんな恐ろしいめにあうだなんて思ってもみなかった。たぶんあの瞬間、私には死相が見えていたに違いない。
今後シンサマさんにはなるべく近づかないようにしようと心に決めた。そんな彼ですが、何故か今神妙な顔つきで私を見てる。今度はなんなんですかね一体…もうやだ戻りたいスルーしたい
「なまえ君…そういえばその服なんだが…」
どうやら指差すのは私の服のようだ。なにもおかしくはない上下セット価格で買ったものですが、何か気になることでも?まあ皆さんとはそぐわないかも知れませんが…
「ジャージのことですかね。これ、私自慢の一張羅なんですよ」
「え、一張羅?」
「一張羅…」
「一張羅って」
自慢げに言ってみせるも、困惑した眼差しを惜し気もなく向けられる。なんか切ない。
「そういえば…なまえちゃんはなんで他の服を着ないの?毎日それ着てるわよね?」
「え?だって他にないからですよ」
今度は何故かザワザワし始めた。……いやまあ、そうだよね。私毎日これ着てますから。キタナイってことを言いたいんですよね。いやいやだってこの服しかないんだもの。だからこれを一張羅と言い張るしかないじゃない。着るしかないじゃない。
「うん。それさ、毎日着てるからかニオイがね」
「…ニオイですか」
苦し紛れにシンサマさんが言っているのはよくわかった。
「毎日同じものを着るのは君も嫌だろう。だから新しいのを用意したいんだ」
「臭いってことですか」
「いや…なんていうのかな。別の服も着たいだろうって思って」
「臭いんですよね」
「ほら、なまえ君も女の子だし」
「臭いって言えばいいじゃないですか」
「ま、まあ…そ、それなりにキてるかなって」
「臭…」
「そうだ!確かに臭いんだよ!」
「酷いです。そんなにハッキリ言わなくてもいいじゃないですか」
この人本気で言いやがった。泣きたい。今の私臭いってよ…
「王よ!それはなまえちゃんに対して失礼です!!…言われてみれば確かに臭うけど…」
「その発言はいくら貴方でもいただけませんね。異臭がしたとしもそれでも彼女は女の子なんですよ」
「………。有り得ないっす」
「俺でも(臭くても)言わないですよ、それ」
「なに?フォロー?貴方達フォローしてるつもりなの?」
思わぬ援護射撃がきた、のに、さりげなくジャブが効いててほんと失礼。どっちをどうけなしてるのか擁護してるのかわかったもんじゃない。ダメージ半端ねえなクソッお前達許さない
その傍らでシンサマさんが独り孤立してなんともいいようのない顔をしていたがスルーしておいた。世の中触らぬ神になんとやらです。
「まあ、先程も言った通り一張羅なんで。これしかないんです、ニオイは我慢してください」
「…なまえ君、はじめから服も用意するって言ってるだろう?いい加減甘えてみてもいいんじゃないか」
「いや、」
甘えるとか別にどうでもよくて。ただジャージ動きやすいし便利だし一番楽な格好だから他いらないってだけで。…しかも、こんな場所に何日もいるつもりなんて予想してなかったんだよ。すぐ帰るつもりだったんだって。服なんていらないから帰りたいほんと早く帰りたい。
「借りを作ったら必ず返さないといけないってお父さんに厳しく言われたので……ほ、ほら、私、貴方達にちゃんと返せるか不安なんで」
こんなセリフ漫画でしかみたことないけど。どちらかというと親から言われたことないんだけどね。…カッコイイから言ってみたかっただけっていう。
…。さっきからテキトーなことしか並べられない今の自分を殴りたい。もう謝りたい。自分で言っててちょっと気持ち悪いし、こんなこと考えたこともないよ。変な事は言うもんじゃないね。
あれ?なんかまた空気変わりました?やばいね。バレバレですよねこんな話、
「か〜ら〜の〜、なーんちゃっ…
「なまえ君!君はなんていい子なんだ!!!」
……て。…ん?ちょ、」
「なまえちゃん一緒に買い物に行きましょう!私が選んであげるわっ」
「………」
アレ?これはマズイよ。今の話鵜呑みにしてますよ絶対。ヤバイ謝りたい。けどもうこの雰囲気で嘘なんていえないね