暇です死にそうなんですと死んだ目をシンサマさんに向けると自室で本でも読んでいなさいと言われ、本を渡された。則ち今私はひとりで部屋にいるワケで。…ハッ。そんなスキを与えていいのかい君達。こんな瞬間を見逃すなんでできるわけなかろう。全力で逃げ出してあげようではないか。
グヌフフとひとり笑う。誰もいなくなった安心からか自分の笑った声が凄まじいキモさを纏った声になり、無駄に響いたので気分がゲンナリした。

「お前…大丈夫か?」
「ハッ!?!?」

いつの間にかドアが開いていてそこから可哀相な目で見つめていた人がいた。その目をやめて頂きたい。というか…アンタ勝手に女の子の部屋覗くなよ。着替えてたりでもしたらどうしてくれるんだ。

「…。あの…その可哀相な目をいつやめてくれるんですか」
「あ、…ああ悪ィ。ちょっと気持ち悪くてな」
「本人を目の前に言うだなんて絶対に許さない」

ハイ、心が折れました!完全に折れましたよ!

なんて人だ。信じられない。
「そんなことより」、なんて続けざまに何か言おうとしてるけどこのこと絶対に妬みますから。忘れませんよ私。

「俺はシャルルカンってんだ!お前はなまえだろ?」
「また変な名前が…」
「あ?」
「ヒイ!!シャ、シャルさんと呼ばせてもらっても!?」
「おう!好きなように呼べよ!」

ニカッと笑う姿は頼りになるお兄さんのようだった。格好は凄くヤンチャだけれど、そこは見ないフリをしよう。あ?とかドス黒い声が聞こえたりもしたけど聞こえなかった。私は何も…



シャルルカンがこの部屋へ訪れた理由は少し前に遡る。シンドバッドからシャルルカンへ直々に挨拶がてらなまえと喋ってみなさいという計らいのもとではあったが彼女の見張り役としてやってきたのだ。彼自身、魔導士のヤムライハとは逆になまえに対し特に興味は無かったがまあどんな奴なのかくらい確認しておこうと思い承諾したらしい。
…そんな彼が見たのは先程のなまえ。ひとり部屋で怪しくほくそ笑むその姿はヤケに異様に見えたのだ。思わず気持ち悪いと口に出してしまったが、反応が中々面白い奴だというのが彼の評価になった。良い意味でも悪い意味でも。


「なー部屋にいるのってつまんなくねーか」
「暇なら本読みますか。何冊かありますし。あ、でもシャルさん本読むのお嫌いですよね。きっとそうですよね」
「お前俺の何を知ってんだ。本くらい読むぞ」
「マジか。意外過ぎて、その見た目的に?な、なーんてね。やだなぁ冗談ですってハハハ」

部屋で二人、軽く話をしていたが暫くしてシャルさんはつまんなさそうに椅子をギコギコと揺らした。う、うるせええ

「外に出ようぜなまえ!俺は部屋なんて退屈なんだよ」
「なんて身勝……いや出ましょう。私もなんか外へ出たくなりました」

身勝手なと告げるつもりだった言葉を止めてふと考える。外に出た方が何かと都合は良さそうだ。これはもしかしたら上手く抜けれるかもしれないよね。この人ジャーさん達より楽勝かもしれない。なまえは無意識に失礼な憶測を立て彼の後をそそくさとついて行った。



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