最悪だ。なんて最悪なんだ。

「眠れないとか信じられない」

目がかっ開いてどうしようもない。どうすればいいんだこの状況……いや待てよ。みんな就寝してるだろうから今なら帰れるんじゃね?そうじゃん今出てみよう。あれ今更気づいたとか私馬鹿なのかな…ハハッ。そうだよね夜中に抜け出すのがセオリーなのかもしれない。
そう思ってなまえは部屋の外へ出た。思いの外ドアの音が鳴ったので多少驚きはしたものの廊下には誰もいない。オーケーオーケー、大丈夫問題ない。…でも、暗い。ここ蛍光灯らしきものが見当たらないんだけど一体どういうことなんでしょう。歴史ある文化財だからそういう類は付けない的な?のそのそと壁づたいに歩く。どちらが出口かどうなのかわかったものじゃない。でも今引き下がるわけにもいかない。逃げれるかもしれない可能性を!私は!捨て切れない!



「どちらに行かれるんです?」
「オギャッ」

早速ダメだった!誰もいないと思ったの…に…!背後から声がして反射的に振り向きズササササと後ずさった。月明かりに照らされて見えたその人。

「いや、あのですね、…ちょっと、の、喉渇きまして…」
「おやそうですか。ですが暗いから危ないですよなまえさん」
「デ…デスヨネー」

言い訳なんて通じてないだろこれ。私の目的は彼の登場により完全に打ち砕かれた。チクショウオオオ!なぜここにジャーさんがいるんだァァアア

「私もご一緒させていただいても?」
「…マジでか」
「今日の執務が終わりましたからね。ちょうど息抜きしたかったところです」
「え、私ひとりで…」
「あれ?なんだか耳の聞こえが」
「は?」
「は?」
「い、や。そうですか…じゃあ、案内お願いしても…」
「おやおや。なまえさんからお誘いして下さるとは」
「……」

こ…これは。もう死亡フラグしかない!誰か…誰か助けろ下さい!
微笑ましい笑顔なはずなのに何か違う。もうやだ見たくない。なんなんですかこの人。どう反応したら正解なのかわからないよ寧ろ正解あるの?ないだろこれ。


別な意味で完全に目が覚めた。この夜をこの人と二人でいなければいけないとかラスボス的な何か?ねえ絶対そうじゃないの。マ…マ………マーさん助けてマジ助けて!…残念ながらそんな願いも都合よく叶ったりしないのが世の中です。
でもジャーさんがいてくれたおかげで温かい飲み物を用意してもらえた。これに関しては本当に有り難かった。当初の目的さえ忘れ、だらしない顔でほっと一息つきながら窓の外をみた。遠くに見える星はいつも以上にキラキラと輝いているようにもみえて目がそらせなくなった。私、こんなに星を見たことあったかな。


「逃げ出そうとしていたんですよね」
「えっ」

声がするまでジャーさんの存在をすっかり失念していた。シマッタ、むしろ忘れていた方がよかった。

「いいんですよ正直に言っても」
「……そうですね。ほんと、帰ろうと思って。夜ならいけるかと…」
「貴方はそんなに帰りたいんですか?」
「だって家族が心配しちゃうんですよ。怒られるのも嫌ですし、ほら、私ゆとり世代ですから」
「…ゆとり?」
「褒められて伸びるタイプです!」
「はあ…。まあ、私達も貴方に意地悪してるわけじゃないんですよ」

キリッと宣言してみたらジャーさんから簡単にあしらわれた。地味に切ない。もっと突っ込んでほしかったのに。

「まだ貴方を帰すわけにはいかないんですよなまえさん。でもいつかきっと、帰れるようにしますから」
「ごめんなさい。待てなくて行動しちゃうかもしれませんね。私行動派なもんでこう見えて運動神経抜群なんですよハハッ」
「アンタ本当にいい度胸してますね。まあ私、こう見えて鬼ごっこは得意ですから任せてくださいよ」
「えっ……いま、アンタって…アレ?いまちょ、っ、おかしくない?」
「背を向けた獲物を追いかけるのは楽しいですよ」
「やだこわい。超こわい」
「ふふふ」
「運動神経抜群能はウソですホント許してお手柔らかにごめんなさいホント許して」

勝てる気がしない



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