「え?何?なんなの?魔法?」
「そうよ。なまえちゃんは見たことないの?」
「え、だって、魔法…、魔法って」
そんなばかな。私の知らない間に魔法が確立されていたのか。当然のように言われても私はどうしていいのかわからないね。
「貴方の周りにいるルフは不思議ね」
「ルフ?」
「ルフも知らないの?…簡単にいうとルフは生命みたいなものでね、ありとあらゆるものに存在し様々な自然現象を引き起こすのよ。私達魔法使いは生まれたときからルフと語ることができて魔力(マゴイ)を糧に命令式を与えて魔法をつくるの。人工的な自然現象ってところね」
「」
「なまえさんにはその才能はあるかしら?」
「あ…あっても扱える自信はないですね」
「あら?どうして?」
「だって…そんな…一般人ですし…」
は?彼女、電波か何かですか??どういうことなの。なんで平然と魔法とか言ってるんですか。ヤムさんの魅力溢れる小悪魔的な意味ですか。いやでも周りの方々も至極当たり前的な感じでヤムさんのお話を聞いてるとか。むしろ無表情な私をみてざわざわとしてるのコレ。空気わっる!超わっる!私のせいですか。
「やはりなまえ君は魔法を知らないのに、重力を操り浮遊をしていたのか」
「そういうことになりますね。命令式も与えてないのにそんなの有り得ないわ。どうしてかしら?すごく気になる…」
「…なん…だと…」
浮遊魔法??私そんなことしていたの?…た、確かに一番初め建物の上にいたときはビックリしたからあれ実はシンサマさんと共有してしまった夢なんじゃないかって思うしかなかったんだけど。むしろ今も夢にしか思えてならない。
あと直に有り得ないとか言われるとヘコむ。
「なまえちゃんちょっと試させてね」
ヤムライハの声になまえはすぐさま視線を向ける。ここの人達の『試させて』、とは嫌な予感しかしない。ほんとしない。でもやっぱり見なきゃよかったと心底後悔した。
ヤムライハの周りに何故か水の塊が浮遊する。そんな光景を見てしまったときは心臓が飛び出そうなくらいビックリした。いいよともダメともまだ言っていないのにヤムライハはその塊をなまえにぶつけてきた。だ…だからあれほど可愛いからって許さないと……っクソ!
「な、なにを」
「うそ…っ」
反発の一つでもしようとしたらヤムさんに遮られた。目を丸くさせて何故か私をみる。なんでそんなに驚いてるのかな。
「魔法の干渉を受けてない、の?」
「えっ」
確かに水の塊をぶつけられたはずだった。目前と迫るそれから逃げる暇さえなく当たったかと思ったのになまえはちょっとも濡れていなかった。
ヤムライハは自身の目でそれを確認した。水がなまえへ触れる前にルフが彼女の前へ集まり水が弾けてなくなった。…防壁魔法ではないやり方で。ヤムライハのように魔法使いじゃなければルフは見えず、水が不自然に飛散したように見えるだろう。
「これは…」
「貴方一体何なの?」
「何、と言われても…」
どうしよう。変人に確定されそう。会う人会う人に何者だとか聞かれる私は既に末期なのか。
やばい。ずっと気になってはいたけどこの変な鳥もどきのことは見えないフリしよう。聞こうと思ってたけどやめよう。これ以上変人扱いの格を上げたくない。私は一般人だ。魔法使いとかそんな中二病はとっくに卒業してるはずなんだ。
「不思議よこの子、得体の知れない何かを感じるわ」
「いろんな意味でな」
「ちょっと貴方達失礼ですよね。心が折れた」
「ルフが彼女を取り巻いて離れない。でも魔法の素質があるかと思えば体内のエネルギーはまったくなさそう。普通の人以下よ」
「なにそれせめて人間判定はしてくださいよ」
「…シン様」
「やはり彼女は目の届く場所においた方がいい」
私の発言はスルーなの。人間判定は頼むよお願いだから……
まあいいや。私は失礼しよう。もう無理。こんな中二病の彼らとは解りあえない。無理。
「とりあえず私、ここにはいれないので帰りますね。お世話になりました」
「いやいやいやさっきの話聞いてた?」
「えっ帰ってもいいってことですよね」
「ダメです。帰しません」
歩き出したアヤメをヤムライハが引き止めた。ニコニコと微笑む姿は一見天使のようだがなまえにはそれが悪魔のように見えた。