さっきまでわんわんとブロギーさんが泣いていた。彼の大きな両の目から涙が溢れて滝を作り、己の武器で切り付けてしまったドリーさんの死を嘆く。彼が望んだのはこんな終わり方ではなかった。正々堂々と戦い決着をつけなければ勝敗など意味がない。――だけどエルバフの神は裏切らなかった。ドリーさんは生きていたのだ。彼ら二人で武器を交え闘った100年、それは武器にとっても長く、刃は致命傷を与える程の鋭さはなくなっていた。必然的に時が経てば鉄は錆びる。むしろよく武器が形を留めていたことの方が驚きのようなもの。今のいままでドリーさんはただ気を失っていただけらしく、むくりと起き上がればブロギーさんは驚きのあととても嬉しそうに笑っていた。よかった本当によかった。




「――で?ナミこれからどうすんだ」
「ログが溜まるのに一年、…そんなに待てないわよ」

緑頭の男がオレンジ髪の女の…ナミって人に今後についてを尋ねる。…そうそう。ここに着いたはいいもののログが溜まるのに1年かかる。しかし、この一行を見ていると何か急いでいる事情があるようで、どうするべきかと模索しているみたい。ドリーさんもブロギーさんもそんな彼らに手助けをしたいがログに関してはどうすることもできず…。



「なまえも煎餅食うか?」
「え?い、いいの?」

パリッといい音をたてて海苔煎餅を頬張るルフィが、わたしに一枚煎餅を差し出してくれた。遠慮がちに顔を向ければルフィはニッと笑い、いいから食えと今度は有無を言わせずわたしに煎餅を持たせた。

「わあ!ありがとうルフィ!」

ぱあっと顔を綻ばせお礼を述べたわたしを皆が見ていたことになど気づくわけもなく煎餅にかじりつく。ああ懐かしいなこの歯ごたえ。やっぱり美味い。煎餅は醤油味が一番だよねー。もふもふもふ…

「ここに小動物がいるわ…!」
「なんだこのちまっこいの!」

そんな会話をしていたのもわたしは知らない。



「で?お前は?」
「――え?」

突然、緑頭の彼に振られて反応に遅れた。いやあ…そうね。呑気に煎餅を食べてる場合じゃあなかったね。

「あいつらの仲間じゃねェようだが」
「そういえばアンタ、今更相手のスパイとか言わないわよね?」
「え?スパイ?いやいやいや違うよ。一緒に協力したじゃんわたし!」

思わぬ疑心をかけられてしまったようだ。一応彼らと対立はしていたつもりだけど、まあ、世の中疑うに越したことはないからな。

「なまえは悪い奴ではないと俺達が自信をもっていおう」
「ああ保障しよう。なかなか骨のある奴だ」
「お前らなまえは良い奴なんだぞー」

ドリーさんとブロギーさんの追い風が。二人がそんなことを思ってくれてたなんて嬉しい!それと煎餅食べながら呑気に言っても説得力もないよルフィ!
疑いの目に嗚呼他にわたしはどう返せばいいんだと思ってると、

「ふふ、冗談よ。冗談」

くすくすと笑われて、からかわれていたのだと理解できた。うわーすごくやられた感。
そんな彼女はナミと名乗りそれに続く形でみんなが名前を教えてくれた。水色髪の女の子がビビで緑頭の男がゾロ、それに便乗とでもいうようにルフィにウソップにカルーがまた名前を言ってきたがもう君達とは自己紹介済んでるだろ。それと今此処にはいないが、コックのサンジという人がもうひとりいるのだとか。


「改めて、わたしはなまえっていいます。んで相棒のシロちゃんでっす」
「きゅうん」

名前を呼べばシロちゃんが華麗な動きでわたしの左肩までのぼってきた。嬉しそうに一声鳴いたあとわたしの頬を舐めてすりすり。ざらざらな舌が痛いぜシロちゃん!

「シロちゃん…きつね?」
「うん。たぶん狐!」
「たぶんって…」

ちなみにこの子は毛並みが白いからシロちゃんなんだ。と簡易な紹介をすればウソップから「簡単すぎんだろそれ」と有り難いツッコミを頂いた。君はツッコミのプロだね!



「あの、ところでなまえちゃんはひとりでこのグランドラインを渡ってるの?」
「うん、ひとり!と、一匹で……ってあれ?ちゃん付け?」
「え?」
「…ビビは恐らく勘違いしてる、かな。たまに間違われるときがあるんだけどさ、わたし男なんだ」
「…えっ?お、男、の子?」
「そういえばあまり意識してなかったけど…アンタ男なの?」
「うん」
「男女だなお前」
「だな。ぱっと見わかんねェ」
「旅路には便利な容姿だよ」

どちらにでも化けられるからね。

あるときは八百屋のおじちゃんに別嬪さんだからとおまけを貰えたり、ハンサムおにいさんにタダで飯を奢ってもらったり、向こうが勝手に勘違いして力を抜いてくれたり、とかエトセトラ。…女と見間違われて損はあるけど、こうして得だってある。中性的な顔も利用するものは利用しなければこの世界を生きてはいけない。

たまに間違えられてしまうから性別の勘違いは慣れてる。さっきもお嬢ちゃんなんて呼ばれていたから彼女も勘違いしてるだろうしね。

へらへら笑ってるとビビが申し訳なさそうに謝ってきた。だけどさっきいった通り気にしていないから平気だよーと言っておいた。彼女はとても律儀な女の子なんだろうな。



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