わたしには彼らと違って問題がある。さっきの会話から予測するに人が何人かいる。そんなところへ一緒に行ったって敵味方のわからないのは足手まといの他ならない。
それを理解する為にもまずは観察を、と思っていたけれどこれは酷い。誰にも気づかれないようひっそりこっそり様子を伺っていたけれど……何と言えばいいか。ドリーさんもブロギーさんも仰向けに倒れていてお互いに傷が痛々しい。

「ブロギーさん」
「…っ、なまえか?」

彼にだけ聞こえるよう小さく声をかけた。わたしに気づきブロギーさんは驚いていたけれど顔の半分が白く固まっていて半分しか表情が変わらず。憶測するならばブロギーさんの隣にある蝋燭のカタマリが原因だろうか。先端の蝋燭が炎によって溶け、くるくる回る仕掛けによってその溶けた蝋が遠心力により霧状に降り注ぐ。そしてそれを体に被れば付着し固まる。体だけじゃない。息を吸えば体内にも霧状の蝋が侵入するだろう。…これは案外時間が無いのかも知れないぞ。



「えっとドリーさんとブロギーさんの邪魔をしたのは誰ですかね」

たくさん人がいて誰がドリーさんとブロギーさんの敵か味方かわからない。それにさっき会ったルフィにウソッチョとカルーの仲間は…っと、

「…。それを言うならばあの四人。そして蝋に捕われてる三人が麦わら帽子の少年達の仲間だ」

うむ。確定だ。倒す標的は髪の毛が数字の3になってる男、みつあみ少女と傘を持った女の子に長いコートを着た男。観察したときの分け方と間違いない。

「それがわかれば、わたしも加戦できるよ」

ニッと笑いブロギーさんを見れば無理はするなよ、と言ってくれた。ああ優しいなブロギーさん。そんなほくほくした気持ちになっているわたしを引き戻したのはルフィの声だった。


「あ!なまえ!」
「げっ」

なんてことだ。ルフィに見られた。わたしの声によって全員がこちらを向いてしまい、姿がバレてしまったあああ

「ああああ…まじでかー」
「まだ仲間がいたのだがね」

こういうときは隠密に事を運ぶのが鉄則だってのに。でもバレてしまったのは仕方ない。やるっきゃないか、ってね。

「誰だあいつは」
「な、仲間?私達のかしら…?」
「ちょっとルフィ!あんたの知り合い?!誰!?敵なの!?味方なの!?」
「おう仲間だ!さっき会ったんだー」
「え、と…とりあえずブロギーさんとドリーさんの決闘を台なしにした人達を倒しに来ました。助っ人だと思ってください」

彼らにしては突然すぎるけれど、そういえばわかってもらえるだろう。君達の敵ではないことも。わたしが協力者であることも。

「じゃあそこのアンタ!とっととこのキャンドルぶち壊して!」
「は、はい!わかりました!」

オレンジ色の髪をした女の人の、有無を言わせぬ言葉に思わず敬語を使ってしまった。でも意味はつかみとってくれたようだ。ああ女の人ってコワイ…







うん女の人コワイよ。


「キャハハ!!」

甲高い笑い声を響かせるお姉さんにわたしは正直戸惑っている。
3の数字頭の男はさっきルフィの一撃でこの場から飛んで行って、(…あ。ちなみにそこでルフィがゴムゴムの実の能力者だと知ったんだ)そのあとルフィは色彩を使った暗示をかけるみつあみ女の子に苦戦しているしウソッチョは男の人に追われて一緒に森の中。そしてわたしの相手にはこの女の人だ。

「ちょっとアンタ真面目にやんなさいよね!」
「ま、真面目にと言われても…!」

この人も能力者…ってか、敵さんほぼ能力者だよね。みつあみの子以外。対立している女の人もあの身軽な体から何万キロと自分の重さを変えられるとかチートだよ。チートすぎる!
あんなの受けたらひとたまりもないというか!なんというか!

「わたしは早くあの蝋を壊したいんだけど!」
「それはさせないっていってるでしょう!!キャハハ!」
「ひい!!」

ドゴォ!地面がめり込むめり込む!あっぶねー!本当にあぶねーから!


そんなことをしてるうちに蝋燭に乗ってる三人のヤジすら聞こえなくなって。それに気づいたのもついさっきで、

「ほうら!よく見てみなさいお嬢ちゃん。みんな蝋になっちゃったわね」
「な、わたしはお嬢ちゃんじゃないやい!…って、はやい、だろ…」

勝ち誇った声。振り返れば蝋を受けたルフィの仲間の皆の姿が真っ白だ。おいおい!もうかよ!

「残念ねえ。アンタが来たのも手遅れっていうか、私達に逆らおうとするのが無意味だったのよキャハハ!」
「そんなことないと思うんだ!」
「は?なに生意気な…――」
「お姉さんごめんね!」

ドスン…ッ
油断していた女の人のお腹を鞘でひと突き。少し力を抜いてはおいた。けど、これで彼女はしばらく起き上がれないはず。

「うっし」

すんなりと事が終わり、手に持っていた武器を腰に巻いた帯の背に挿して。再び、カラカラ音を鳴らし回り続ける厄介な蝋の塊を見上げた。まだすべて片付いていない。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -