ここはグランドライン。つい先日、イーストブルーからグランドラインへ入ったモンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味が木々生い茂る島、リトルガーデンへとたどり着いた。新たな冒険にワクワクする者、島に何がいるのか恐れる者、自分の意思赴くがまま各々が動き出していた。

そこに待っていたのは戦士の村出身、二人の巨人族。青鬼のドリーと赤鬼のブロギー。およそ100年もの長い月日をこの島で過ごし、島の真ん中にある火山が噴火すれば武器を交えている。いつしか何がきっかけだったのか、始めた理由すら忘れてしまった決闘を今も尚続けている。それは彼ら“エルバフ”の掟。誇りをかけた戦いでもあるのだ。




「―ああそうだ。言い忘れていたが」

つい先ほど親しくなったばかりのルフィから貰った海賊弁当を食べながら、巨人族のドリーはふとその存在を思い出した。

「…ブロギーの他にもう一人、この島にいるな」

このリトルガーデンは旅の必需品であるログポースのログが溜まるのに1年程かかり、さらに島特有の気候は人間にとっては厳しい。気性の荒い恐竜も数多く弱き者はエサに。飢えの犠牲に。その環境下で生き残る人間は殆どおらず島を出る前に土へと還った。しかしその中で数ヶ月前にこの島へ辿り着き逞しくも生き延びている人間がただ一人。

「へー!そいつもおっさん達と同じ巨人なのか?」
「いやお前達と同じ普通の人間さ。まあどっかその辺にいるだろ」

それも生きていればの話だがな、と付け足し笑う。そんなことを言ってはいるが実際ドリーはその人間が死ぬ可能性などこれっぽっちも考えていない。そう簡単にくたばる奴ではないことをこの数ヶ月でドリーはよく知っているからだ。

「さて。お前達から貰った酒、有り難く頂くぞ」
「ああ貰ってくれ!」

ゴクリ。ドリーの口に運ばれたその酒が爆発したのは今からほんの少し前の話。









――ピクリ、真っ白い毛並みをもつ狐の耳が揺れた。その二つの目をまっすぐ森の奥へ向けながらきゅうと一声。草むらを掻き分け進んでいた少年の視覚にもその様子が見え狐と同じように前髪の隙間から目を向けた。

「ん、なんだ?」

ついさっき噴火があったことは知っている。彼らがその合図で決闘をしているのも知っている。…でも、何かが違う気がする。なぜだろう。いつもの噴火から始まる二人の決闘とは違うよう、な?はてさてこの音はなんだろうか。


「んー…行こうかシロちゃん」

まあ疑問に思ってもわからないものはわからない。未だ向こうを見つめる狐に呼び掛ければ少年の体をよじ登り左肩の定位置へとついた。

どうしてかはわからないけど胸がザワつくような、なんだか嫌な予感がしていたのだ。



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