ナミの傍に付き添っていたシロちゃんがわたしを見つけてこちらへ来る。まっしろな体は雪の白と溶け込んで見失いそうになるけれど飛びついてきたのを腕でしっかりと受け止めた。

「シロのお陰であいつに襲われずにすんだわ」
「ナミのことしっかりみてくれてたんだね。シロちゃんありがとう」

ナミの言うあいつとはワポルのことで、ルフィと闘っている途中の隙をみて城内へ侵入したときナミが襲われそうになった。そんなときシロちゃんがワポルへ飛び掛かりナミを助けたとのこと。その一部始終を聞いてよしよしと頭を撫でれば嬉しそうに鳴いた。




ルフィに勧誘され、頷いたチョッパーは今くれはさんに海へ出ると報告をしに城へ入っている。これでナミは医者の治療を受けながらアラバスタへ行けるようになった。

「これですぐにでもこの島から出れるわね」
「うん。本当によかった」

ナミはにこりと笑いわたしを見つめる。そんなに合図しなくてもわかってますから、そんな意味も込めて見返しておいた。けど、

…はたして上手く言えるだろうか。




「次の島なまえも行くだろ!」
「っ、え…」

どう切り出そうかと考え倦ねていると、当たり前のようにルフィが聞いてきた。いや、聞いてきたというより確定だと言わんばかりの自信だ。わたしが仲間になることを信じて疑わず彼はしししっと笑った。

「わたし、仲間になっていいのかな」
「おう!」
「な…仲間って、友達なのかな」
「ああ!友達だ!そんなこと当たり前だろ!」

何言ってんだ?なんてルフィに言われて自分の考えが少しバカらしくなったのは内緒。こんなにもあっさりした感じで仲間になれるのはただただ驚くばかり。嗚呼やっぱり友達って素敵な響きだと改めて思うのです。

「ありがとう。これからもお供させてください。皆も宜しくお願いします」

「なに畏まって言ってんのよ」
「よろしくなーなまえ!」
「いいかなまえ!この船に乗るっつーことはまず第一にナミさんとビビちゃんを守ることだ!」
「何言ってんだエロコック」
「んだとやんのかコラァ」
「あーもう!あんたらやめんかァ!!」

相変わらずこの人達は騒がしい。本人そっちのけでガヤガヤやり始めるのも凄く面白い。何度目かのデジャブを感じつつそんなみんなを見ているとビヒが傍に来てふわっとした笑顔を見せてくれた。

「よかったわねなまえちゃん」
「うん」

まるで自分のことのように嬉しいと笑うビビにつられてわたしも笑った。
そんなことをしてるうちに城内が騒がしくなってきたような?一体こんなときどうしたのかと首を傾げていると城の入口から獣姿のチョッパーがソリを引いて現れた。


「みんな急いでソリに乗って!!山を降りるぞ!」

急な下山の指示に一体どうしたのか。……その意味がわかったのは直ぐのこと。


「待ちなァ!チョッパー!!」

彼の後ろを追いかけるのはくれはさんだ。それだけならば何も問題はないのに、彼女の両手には包丁が。

「「なあああ!!??」」

放たれた包丁がびゅんびゅんと風を切る。まるで般若のような、くれはさんのあまりにも恐ろしい形相に全員が急いでチョッパーの引くソリへと乗り込んだ。慌て駆け込んだ為にルフィがソリへ乗り切れずウソップと手を掴み宙を浮いたまま山を降りる。頂上から一本だけ張られたロープを器用に降りるチョッパーと、わたし達を真ん丸お月様が照らしていた。






ドォン!!!

「な、なんだ!?」

降りたばかりのドラムロック頂上から幾重にも砲撃音が響く。鳴りやまないそれに意識を取られながらも海へとかけるソリ。

「お!次は明かりがついたぞ!」
「うそっ何これ!?」

その音が収まったかと思えば続けて明かりが灯る。その強い光によって、すべての全貌が見えた。空から降る雪がピンク色に染まった不思議な光景。
その雪を視界に入れたチョッパーがゆっくりとソリを止めて空を仰ぐ。じわり、彼の瞳に涙が溜まる。

――恐らくくれはさんは



「なまえ、気をつけていきなよ」

ワポルを追い出してすぐルフィに追いかけ回され隠れてしまったチョッパーを探しに行く為、室内から出ようとしたのを呼び止めたのはくれはさん。…はて?この場で気をつけてなんて言葉を言われるのは不思議に思い、振り返る。彼女を見れば椅子に座ったままただじっとわたしを見つめていた。一言わかったと返せどもくれはさんはどこか浮かない顔をしつつ口を開く。

「チョッパーのこと宜しく頼むよ」
「うん。わかった」


あの時、わたしはただチョッパーを探すつもりの意味だと思っていたけれど。でもやっぱりそれは違うようにみえた。わたしがちゃんと仲間になることもチョッパーが海へ出ることも。…改めて思い返せば、彼女はすべて分かっていたのかもしれない。




チョッパーが空を見上げ声をあげる。ぽろぽろと流れる涙が頬を濡らす。彼がみるドラムロックにおおきな花が咲いている。



「…あれは?」
「桜だよ。暖かい春に咲く、花」

夜空にライトアップされたドラムロックの山がピンク色を纏い桜の木を連想させた。落ちる雪は風に吹かれ舞い散る花びらのよう。あたりは一面冬なのに、なんて幻想的な世界なんだろうか。

「冬に桜が咲くなんて…」
「…綺麗ね」

まさか、こんな風景が見れるなんて。
懐かしい桜の姿に思わず目の奥が少しだけ熱くなるのは気づかないふりをしてわたしは冬の桜を見つづけた。



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