ルフィとサンジがほどなくして目を覚ました。途端、二人がチョッパーを食材にしようと躍起になっているのを何とか止めたり等で忙しくなった。そんなこんなで巻き込まれてしまっているチョッパーにどんどん懐かれてる気がします。なんて役得なんでしょうか。
チョッパーに癒され、今この場にいない彼を思い出してデレデレしていればふいに頭を掴まれた。それはもうガッと。あ、頭が痛い!痛いですサンジさんん…!
「おいなまえ……ビビちゃんの護衛はどうした」
「ひい!すみません!ウソップに任せてあります!」
なんとなく言われるだろうことはわかってました!こわい!こわいよサンジ!
「お前を留守番役にした意味がねェだろうが」
「……み、みんなのことが心配だったんだよ。うう、ごめん…」
あのまま入れ違いになってしまったら病状の思わしくないナミはどうなってしまうんだろう。ルフィとサンジは無事に山を登れただろうか。悶々と溢れた不安に、せめて医者を連れ戻すくらいの役目を果たしたかった。わたしは一刻もはやく苦しそうなナミを医者に診てもらいたかったのだ。
言いながらどんどん小さくなった声。それに伴い彼らの顔を見ることが出来ず視線が床に落ちた。
「心配ありがとね、なまえ」
「まあ、あいつもやるときはやるしそれほど心配しちゃいねーよ」
「なーなーなまえー仲間になれよ。俺、お前と別れんの嫌だなあ」
「……っ」
頭上から降りてくるナミ、サンジ、ルフィの言葉達。思わず顔を上げて口をきゅっと結ぶ。うわ…やばい。三人の優しさに視界が歪みそうだ。
「なんだい。お前はこいつらの仲間じゃないのかい?」
「前の島で拾ったのよ」
「!?ひ、拾ったって…そんな、拾ったって…」
「ふふっ冗談よ」
感動も長くは続かず。ナミの一言で全ての感情が引っ込んだ。くすくすと微笑み「反応が一々面白いんだもの」、と言う。うぐっ!明らかにからかわれてる…!
「ヒーッヒッヒ。あれだけお前達を心配しておいておかしなことだね」
「く、くれはさん!やめて!改めて言われると恥ずかしい!」
隣でくれはさんもわたしをからかおうとする。女の人こわい!なにこのコンビネーション!勝てません勝てる気がしません!
「なあ医者になってくれよ!ばあさん」
二人がひとしきり楽しんだあと、ルフィがくれはさんに海賊になろうと勧誘をし始めた。くれはさんは腕を組み静かに声をかける。
「ルフィと言ったかい?お前の名は」
「ああそうだ」
「口の聞き方にはきをつけなァ!!」
「へぶう!!」
肯定を示した矢先、くれはさんがそれはもう素早い動きでルフィ目掛け右足を蹴り出した。力強いそれを受けルフィが吹っ飛ぶ。
「すげえババアだな」
「サ…っ」
サンジイイイ!
思わず零れたのだろう呟きに、彼もまたくれはさんの足技を食らって壁にめり込んだ。うわああっ!あの時村で蹴られなくてよかった…!本当によかったと今切実に思います。
「ねえ、私達一刻を争うくらいに旅を急いでるの。薬貰って治すじゃダメなの?」
「何度言っても変わりゃしないよ小娘。私の前から患者がいなくなるときは治るか死ぬかだ」
どうやらくれはさんはナミが完治するまで外に出す気はないらしい。確かに急いでいるといえど治すにこしたことはない。なんせあの船には医者もいないからくれはさんの言葉は尚更だ。困った顔でわたしを見るナミの姿に何とも言えず同じような表情で返すしかなかった。