壁に飾ってあった黒い旗。ドクロマークに花びらがそよぐそれが、わたしの目にとまった。なんて粋な図柄だろうか。

「この海賊旗の花は、桜?」
「なまえはその花を知ってるのか?」
「ああ。わたしの故郷で咲いているんだ。すごく綺麗なんだよ」

ピンク色の小さな花。それだけでも十分綺麗だけれどあれが満開になるともっと凄い。それを語るとチョッパーが目を輝かせるものだから、どうしてこの旗には桜があるのかと聞きたくなった。すると人に奇跡を起こした桜だと言った。

「俺、この旗に誓ったんだ。何でも治せる医者になるって」

旗を見つめて口にする誓い。曇りなき目とまっすぐ告げた言葉に誠意さが伝わってくる。

「助けたい気持ちだけじゃ、誰も救えないんだ」

視線をずらし、手にしてた棒をゴリゴリとボウルへ擦り付けるチョッパー。自分の言葉に照れているのかこちらをなかなか向かない。彼はきっと医者になる為に膨大な知識を頭に叩き込んできたんだろう。

「すごいね」

だから一言わたしが呟けば、驚いたチョッパーの視線がこちらへ移る。にっと笑みを浮かべて返せば少し間を開けたあと体をくねくねさせて顔を綻ばせた。

「ほっ、褒められたって嬉しくなんか……ねーぞコノヤロウが〜!」
「わー嬉しそうだね」

このかわいらしいチョッパーを見るのが何より楽しいと思うのはわたしだけの秘密です。



「あ、チョッパーそれ運ぶの?手伝うよ!」
「ほんとか?助かるよ」

調合した薬を運ぼうとするチョッパーに声をかけて彼の荷物を運ぶ。まるで助手みたいだーなんて呑気に彼のあとをついて行った。ナミもサンジもルフィも今はベッドで眠ってる。くれはさんとチョッパーが三人の処置をしてくれたおかげで命の心配はないとのこと。はやく三人が目覚めてくれればもっと安心できるのに。でもまあ何はともあれ本当によかったなぁ。



チョッパーが向かった先にはナミが眠る部屋。ふと彼女を見ると額に乗せた氷が溶けていたのでチョッパーに取り替えていいか許可をとってから用意をする。あの苦しそうだった表情はなくなり、わたしから見てもだいぶ顔色の良くなったようにみえる。音を立てないようゆっくり取り替えてると、ナミの目がうっすらと開き始めた。

「なまえ…?」
「わ、ナ、ナミ!!起き…」
「患者の近くで大声出しちゃダメだぞ…!」

思わず声を出してナミの声に応えたがチョッパーにとめられる。お…おお。まだ安静にさせなきゃいけないもんな。
大丈夫?具合は?なんて言葉を投げかけてみるがどうやらナミはチョッパーにくぎ付けらしい。その視線にか、いつの間にかわたしの脚に隠れているチョッパー。やだ超かわいいです。

「しゃべった!!」
「ぎゃああああ!!!」
「わああナミぃ〜チョッパーを脅かせないであげて!」

どうしたのかと首を傾げていたけどナミにはチョッパーが喋ったことが驚きだったようだ。ビクビクしてたチョッパーがナミの言葉を聞いてか一目散に部屋から逃げ出した。おい。一番デカイぞその声。その際物が盛大に壊れる音が響いたのは聞かなかったことにしよう。コホン、とひとつ咳ばらいをして改めてナミへと向き直る。

「彼はチョッパーだよ。ナミおはよう。元気そうでよかった」
「ええ。気分がずっと良くなったみたいだわ。ねえなまえここはどこ?」
「そう聞いて安心したよ。ここは山の頂上の城。くれはさんが住んでて…、あ、彼女医者なんだ」
「ヒーッヒッヒッヒッ!熱も引いたみたいだね小娘」

説明を入れてるとちょうどくれはさんがやってきた。ナミの額に手を当てるだけで体温が解るなんて凄いなくれはさん。

「あ、そうだ。山にいるのならあと二人いるはずだけど」
「そいつらなら別の部屋で寝てるよ」
「二人も結構ボロボロだったんだ。ちなみにウソップ達はまだ下の村にいると思うよ」

村で留守番してたわたしとシロちゃんだけがここにいる。くれはさん達とこの山に登る前、くれはさんと出会った村に置き手紙だけは残しておいた。気づいてもらえるよう周りの人達に伝えておいたし。…ウソップとビビが村に来れば問題はないはずだ。あの村に来ていれば、の話だけれど。



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