「なあそろそろ離してくれよ」
「やーだ」

膝の上に乗せてもふもふあったかい。こんなあったかいものを簡単に手放すものか。きゅう、と少し力を込めてチョッパーの要求をわたしは全力で拒否する。

くれはさんのソリに同乗させてもらい無事に山の頂上に到着。まさかソリが頂上まで張られた白いロープの上を渡るとは思わなかったから少しビビったのは内緒。そして何よりも驚いたことはソリを引っ張っていたトナカイが、突然二足歩行になったこと。しかも可愛いのなんの。すぐ捕獲してもふもふしていればくれはさんから大きな溜め息を頂戴した。チョッパーはチョッパーではじめは暴れたのだけど運んでくれたお礼を兼ねて感謝を述べればバカヤローとかっていう言葉を発したものの物腰やわらかくなんか体をくねくねさせてた。うん。とても嬉しそうだったね。

「…お前おかしなやつだな」
「うん。よく言われる」

笑えばチョッパーはそっぽを向いた。やだかわいい。ツンデレじゃないですか。その可愛さからまた磨きがかかるとは!

「ちなみにわたしなまえ。この子はシロちゃん。よろしくね」
「きゅう!」

シロちゃんはとても元気な声で一鳴きする。どうやらシロちゃんはチョッパーを気に入ってるらしい。そしてチョッパーもまた満更ではないと思う。そんな二人(?)に頬が緩むのは許してほしい。致し方ないよ絶対。


どうしてわたしがこんなにノンビリしているのかといえば未だルフィ達が頂上に着いていないため。いつ来るのかとずっと待ってる次第。ひとり、そわそわするわたしに気づいたらしいくれはさんは「見ていて鬱陶しい」と一喝しつつココアをくれた。ほっと一息ついてるなか、チョッパーが鼻をひくつかせ外を見た。


「向こうから人のニオイがする」
「やっと来たようだね」

やれやれとくれはさんが首を竦める。その間にもチョッパーはわたしの腕から飛び出し外へと走り出した。少し出遅れつつも、わたしもついて行かなければと立ち上がった。



駆けていったチョッパーの足跡を辿っていく。ひんやり…というかかなり寒い外のせいで一気に体が硬直する。息をはけば白い靄が出てよりいっそう凍えるばかり。腕を摩りながら足跡を辿れば、何故か途中からトナカイの小さな足跡が人間の足跡へと変化した。何故だ?首を傾げつつ元の姿をなくした足跡を追う。疑問に思いながらも前方に視線を向けたときガクンと一角の雪が崩れ落ちるのが見えた。


そして。その場にいたのはもこもこした大きな背中。その手にあるのは人間の腕。落ちかけたのを引き上げ、安全な場所へと移せばそれが気を失っているルフィやサンジ、ナミだとわかった。そして三人を助けた誰か。何もいわずにこちらを振り向いたそれの鼻は青い。わたしの目を見ることはなく、ただ何かを恐れ強張る表情のまま頭を垂れた。そのヒトが誰かわからないほどわたしは鈍くはない。


「驚いたかい?」

わたしの隣ではいつの間にかくれはさんがいて、この場にそぐわず笑う。まるでバケモノみたいだろう?と投げ掛けられた言葉に、わたしもまたくれはさんと同じように笑った。

「それ、すごくあったかそうだねチョッパー」
「……っわ、」

シロちゃんがチョッパーのもとに駆け寄り軽やかに肩に乗る。何をそんなに怖がっているかは知らないけれど、そのもふもふした体に飛びつきたい衝動は確実にある。


「ヒーッヒッヒ。さて、この餓鬼共をどうにかしないとね」
「はっ!!みんな大丈夫かな!?この三人だよ!ナミが病…みんな病人になってるけど!」
「む、むやみに動かしちゃダメだからななまえ!」

急いで駆け寄り三人のようすを確認しようとすればチョッパーに止められ、彼とくれはさんが診てくれた。凍傷しかけてるとか肋骨何本折れてるだとかこわい言葉が飛び交う。何よりナミが一番危険だと診断するや、ルフィの手がくれはさんの腕に伸びてガチガチと震えながら言葉を紡ぐ。「仲間なんだよ」、と。

「安心しな助けてやるさ」

くれはさんの一言にルフィは少し安心した為か再び気を失った。こんなにボロボロな姿になりながらここまで来た。それだけ仲間が大事で。死なせたくなかったんだろう。


「…あの、わたしからも頼みます」

わたしだって三人には死んでほしくないんだ。でもわたしにはただ頼むこと、祈ることしかできない。悔しさに頭の中がもやもやしていれば徐にくれはさんがわたしの頭を軽く叩いた。

「そんなことを言ってる暇があるなら運ぶのを手伝いな」
「………は、はい!」

わたしの手で救うことは出来ないとしても、やることはきっとある。



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