航海士のナミが床に伏せているだけで船の動きは制限される。例えば夜の海じゃ何も見えない視界で船を動かすことは危険だったり、ハリケーンの前兆をとらえる意味であったり。とにかくナミ自身の海に対する知識や感覚がないことは厄介だ。この海じゃいつ何が起こってもおかしくはないのだから。

空から雪が降る。気温は息が白くなるほど寒いが、ここ最近は気候が安定してきたように思う。則ちそれは冬島が近い証拠。甲板ではルフィとウソップが積もった雪で遊んでいたり、ゾロが展望デッキにて海を確認している。ビビはといえばずっとナミの傍にいる。もちろん交代で看病をしているけど、ビビだけはその場を動かずつきっきりでナミを看てる。それが心配でビビと同じように室内にいるわたしとサンジは顔を見合わせたあとビビの名を呼んだ。

「ビビ、一息つこう。ビビが体を壊したら意味がない」
「なまえの言う通りだぜビビちゃん。少しは横になるべきさ」
「うん、ありがとうなまえちゃん。サンジさん」

わたし達の言葉にビビはふわりと微笑んだ。




突然船がぐらりと揺れる。室内にいる為に外で何がおきているのかはわからない。揺れがおさまったところでサンジが様子を見てくると甲板へと向かった。――その先で聞こえた会話、どうやらこの船に誰かが乗り込んできた様子。扉の向こうで少し乱闘騒ぎを起こしているようでギャアギャアと声がする。部外者が室内に入り込まないようにとわたしも一応入口には向かったけど…問題なさそうだ。扉のそばでサンジが完璧にガードしてるみたい。不安そうなビビの視線には問題ないよと伝えておいた。



奇妙な奇襲はルフィが親玉を吹っ飛ばして終了したらしい。その奇襲の最中に船の一部が食われたというのだから驚きだ。それを証拠するようにトンテンカンとウソップが船の修繕している。え、何…木を食べるってどういうこと?その一部始終を見ていたルフィ達が口を揃えて言うのだからウソではないと思うけれど。正直、意味がわからない。

そんな報告のあと、島を見つけたとの声がした。柱のような特徴的なものが幾つかそびえ立つ、真っ白な島。
医者がいることを祈りつつ上陸をしようとするけどこの船は海賊船。受け入れられると期待する方が無理な話なのかも知れない。陸の上から島民が船を取り囲み、幾つもの銃口が向けられてしまった。
ワケを話すもどうやら聞く耳を持たないらしい。いがみ合いが続く最中、ビビ目掛けて銃が暴発。渇いた音が響き渡り彼女の肩からはじわりと血が流れた。
ビビが傷つけられて怒るのも当然。血相をかえて島民を睨みつけるのも仕方がない。でもこれはマズイ。すぐそばで駆け出そうとするサンジを止めた。

「な?!なまえ止めんな!」
「ッビビ!?なにすんだ!」

そしてビビもまたルフィを止めていた。

ビビは知ってるんだよ。あのまま島民に殴りかかったらどうなるかとか。怒りに任せちゃあ駄目なことも。わたし達が此処に来た目的は戦うことか?否、そうじゃないだろう?


ビビの必死な説得に島民は理解を示してくれた。話すだけで解り合えるやり方もある。もしあのまま飛び出していたら…、そう思うとゾッとする。

「悪かったななまえ。止めてくれたこと、礼をいうぜ」
「わたしが動いたのは偶然ビビの悲しい声が聞こえたからだよ」

ビビは凄い。
力で捩じ伏せるだけでは敵わないことがある。何が大事なのか。何を求めているのか。ならばどうすればいいのか。誰よりもそれをわかってる。だからこうして今、島に入れて貰える。


簡単にだけど血の滲むビビの肩の治療をしておいた。わたしは医者ではないから消毒やら包帯といった応急処置しかできないけれどやらないよりはマシだろう。

「よし、オッケー」
「有り難うなまえちゃん」
「あまり無理しちゃダメだからね」



人の信頼を得るってすごく難しいことなのにね。



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