「なまえ!私と一緒に学校行こう」
「……は?」

それは朝、突然のことだった。
二年生初登校初日、バァンと部屋の扉が開いてヤツがやってきた。

「ブハッ寝癖ひっでえ!!」
「っな!酷いのはそっちだよ!勝手に女の子の部屋に入るなんてデリカシーないよ!」
「なかなか起きてこないのが悪いだろう?」
「…う、」
「ほら早くしたくしないと遅刻するぞ」
「私のことは待たなくていーよ、というかこの時間なら遅刻はしないし平気」
「なにいってるんだ?一緒に行くんだろ!」
「……」

いやいやいや当たり前のように言ってるけど鉢屋と学校行くなんて自殺行為もいいとこかもしれないよ!
そんな私の意見は聞き入れてもらえないらしい。はやくはやくと私のしたくを急がせ準備ができたとわかれば私の手を引っ張りぐいぐい学校へと連れていく。

こんなに人の目を気にしながら登校するの初めてだよ…!







「今年は一緒のクラスだな!」
「…そうらしいね」

昇降口に張り出されたクラス表に私と鉢屋三郎が二組の枠内に載っていた。すなわち同じクラスというわけだ。家もクラスも一緒だとか偶然は重なるものなのか。解せぬ。

「お、雷蔵も同じクラスだ」
「らいぞう?……あ。優しい方?」
「優しい方って、お前なぁ」

呆れ顔を私に向けてあからさまな溜め息をついた鉢屋三郎。…いや、だって、ねぇ?
私の言いたげな視線を感じたのか鉢屋三郎は「どーせ俺は優しくない方ですー」なんて拗ねはじめてブハッと女らしからぬ声を出して笑ってしまった。いやいやまさかそんな反応するとは思わなかったんだよ、ほんと。

「三郎〜」

そんなとき鉢屋三郎の名前を呼ぶ声がした。私は呼ばれていないけど思わず声のした方へ視線を向ければ、さっきまで話にあがっていた彼がそこにいた。その姿を確認するや鉢屋三郎はとても嬉しそうだ。

「雷蔵また同じクラスだぞ!」
「え?…ほんとうに?」
「…まさか…、い、嫌なのか?」
「はは、違うよ」

そんなわけないだろう?とやわらかい笑みを見せる彼、不破雷蔵くん。そしてそれを聞いてほっとした顔をみせる鉢屋三郎。
間近で二人をみて改めて思うことは“そっくり”の一言。どこで聞いたかは覚えていないけど二人は従兄弟だって聞いたことがある。それゆえか同じ顔に同じ髪、遠くから見たら識別するのは難しいと思う。あ、でも髪は不破くんの方が触ったらふわふわしてそうだな…不破くんなだけに…。……うん、ごめん。今調子乗った。

「あの?」
「おい、なまえ?」

二人で話していたと思っていたらいつの間にか二人とも私に視線を向けていた。おっと、いけない。どうやらぼーっとしていたらしい。
こうして不破くんを見ていたわけだけど実は私、不破くんと話したことはない。でも、たまに図書室に行っては彼を見かけ目があったりはしてる。それでも会話という会話をしたことがないからここではハジメマシテが相応だろうね。

「えーと、はじめまして。私、みょうじなまえっていいます」
「僕は不破雷蔵。たまに図書室で会うよね?よろしくねみょうじさん」
「あ、気づいてたんだ。私もよく見かけてたんだ。クラスも一緒みたいだから、よ、よろしく」

想像通り、聞いた通り、不破くんは優しい人だった。彼がにこりと笑えば後ろに花が咲くような錯覚さえする。逆に鉢屋三郎の笑みというのは何か裏があるような気がするんだ。いやでも鉢屋三郎もいい奴だよ、…うん。

「雷蔵も一緒に教室に行こう」
「あ、ごめん。僕職員室に用があるからまたあとでね」

そういってこちらに手を振って職員室へとかけていく。そんな彼を二人でぼーっと見送った。

「まるで花のようだね不破くんは」
「だろう!雷蔵は俺の天使だ」
「…うん、私は聞かなかったことにするよ!」

いきなり始まった不破くんの褒め方に正直失笑した。嗚呼、友人から聞いていた鉢屋三郎のクールなイメージが一瞬にして崩れた気がしたよ。



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