私の母親が再婚する。


おかあさんに好きな人が出来た時も再婚をしたいと告げられた時も私は反対しなかった。だってこれはおかあさんの人生だもんおかあさんの好きにしたらいい。今の今までシングルマザーとして私を育ててくれたのだから、そのくらいの幸せは祝福してあげなければ罰があたる。


新しい父親にも子供がいるそうだ。どんな子だろうか。私はその子供が何歳かとか、女なのか男なのかも知らない。おかあさんは楽しそうに対面してからのお楽しみとか言うけど正直どうしようか困る。…いきなり家族になる、なんて想像もつかないわけで。相手が小さい子だったなら人見知りな私でもなんとかできるような気がする。年上だったらどうだろう、勉強とか教えてもらったり人生経験において頼りになるお姉さんとか。うん、いいね。男の子か女の子かならばここはやはり女の子がいいかも。…なんて想像を膨らめてみたりして。ああとにかくどんな人であっても仲良くしなければいけない。おかあさんのためにも新しい家族のためにも。





新しい家族。親睦を深めるために食事会というものを開くらしい。これが初対面、ってわけで…これから一生付き合っていく人達なんだからなるべく粗相のないようにしたい。きっと出だしは肝心だ。
まあこれから一緒に住むのだとしたらそんなこと意味ないかもしれないけど。でも気分的にそう思う。

そんな私の決意を、あってないものに変えたのは新しいおとうさんが現れたとき……っていうのはちょっと違くて、その息子の存在に度肝をぬいたのだ。
耳を目を、全てを疑った。意味がわからないとはこのことだ。

「え、鉢屋…くん?」
「みょうじか?」

これは一体誰の差し金だろうか。

新しい家族と対面するこの場所で、この顔をみるとは思ってもみなかった。予想すらしてない。むしろしたくもないよね。私は彼のことを知ってるけど、彼は私を知らないかもなぁ。だって面と向かって話したことはないはずだし。…でもまあこうして認識してるのを見ると同じ学校にいることを少なからず知ってはいるんだなと他人事のように思った。


「あら二人とも知り合い?」
「知り合いって、いうか…」

驚いてるのは私だけじゃない。目の前にいる彼の表情にはさほど変化はないけど私をじっと見ながら固まったままだ。

疑問を抱く大人達に同じ学校だったりするかもしれないと意味のない遠回し加減で告げれば二人は納得したようにパッと顔をほころばせた。

「二人は同じ学校なのか。ははっそれは気づかなかったよ」
「あら、そうなの?同い年っていうのは知っていたけど偶然ね」

それでいいのか!とかツッコミたい衝動を抑えつつ、なんというか、母親しかり新しい父親も抜けてる箇所があるというのは認識できた。
今まで相手方の苗字を聞いてなかったのは大きな誤算だと思った。聞いたところでまぐれとかただの偶然とか考えてしまうと思うだけかもしれないけど。でも少しは“かもしれない”の構えができてたと思う。

おかあさんは私の隣で幸せそうに笑う。そして息子さんの肩に手をおきにこりと笑う新しいおとうさん。

「改めて紹介するわね。こちら鉢屋三郎くんよ」
「三郎、こちらが新しい家族のみょうじなまえちゃんだ」

もう自己紹介とかいらないよ。知ってるよ。
なんてことこの場で言えるわけもなく私はただ口角を動かし掠れるように笑うしかなかった。



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