三郎ってこういうのすごいんだよ。

ふいに不破くんが言っていたのを思い出した。


三郎は人を纏める役を率先してやるタイプではないけど、元々任されたものはしっかりやるんだ。だから学級委員の仕事は意外にも相性がいいみたい。一年の時だって、纏まらなかった話し合いもあっさりと決めちゃうし。リーダーシップがあるんだよね。
クラスの人達も三郎の言葉に耳を傾けるし信頼されてたんだよ。それに先生達にも評判がよくて頼りにされてる。三郎ってば結構面倒臭がり屋なのに、すごいよね。だからさ三郎に任せればあっという間に終わっちゃうんだよ。


あれはいつ聞いたんだっけ?…私が副学級委員になって不安になったときに教えてもらったのかなぁ。
確かに、不破くんの言う通りだった。



「――以上、体育祭の種目決め終了です。不明点があったら体育委員か学級委員に言って下さい」

教卓の前に立つ鉢屋三郎。
学級委員として体育祭で行う種目を割り振る作業を行っている。あれがやりたい、これがやりたいというクラスの皆の競技をぱぱっと簡単な振り分けた。
本来体育委員が種目決めをするはずがクラス内がザワザワし始め決まりにくくなっていたとき、体育委員を手伝っていたはずの鉢屋三郎がいつの間にか中心になっていた。

あっさりと決まって体育委員はサンキューとか言ってるけど、彼らはいいのかそれで。仕事を学級委員長に取られたんだぞ。

「よーし体育祭の一週間くらい前から大縄飛びの練習しようぜー!」
「「「ええー!!!」」」
「いーじゃん!クラス対抗だし負けたくねーし!」

…まあ無駄に盛り上がってるからいいのかな。ちなみに私は副学級委員だけど席に座って事の成り行きを見守ってます。だって私が出たって何もならないからね。大人しくしてた方がいいよね。
前に座る竹谷と雑談しつつ改めて黒板をみた。…うわ、私全然競技参加する意欲ない。ひとり最低二つのラインを守ってるだけだ。一つはクラス全員参加の大縄飛びだし…

「みょうじは競技全然参加しないんだなぁ」
「…私運動苦手」
「帰宅部だもんな」
「うん。だから体育祭はぜんぶ竹谷に任せたよ」
「みょうじもこれを機に頑張れよ。しかもなんで俺なんだよ」
「いや体動かすの好きかなって思って。ほら、竹谷ってボール追いかけるのとか得意でしょ」
「なんだそのイメージ。俺は犬じゃねえよ」
「…………えっ」
「なんだよその間は」

だって竹谷喜んで追いかけそうだから。なんて言ったら怒られそうだからやめておこう。世の中言って良いことと言っちゃ悪いこともあるからね。…あ、でも体育祭にボール的な競技って何もなかったよね。竹谷残念

「竹谷は何やるの?」
「騎馬戦、棒引き、大縄飛びに…」
「殆ど肉弾戦だね」
「力には自信あるからな」

確かに、本人がいう通り力はありそうだ。骨格というかガタイは良いし、暴君といわれる七松先輩に着いて行けるって聞いたこともある。
なんと頼れる存在だろうか。竹谷が一番輝けるのは体育祭なんじゃないか?

「ハチー、お前縄回す係に決定な」
「はあ?何勝手に…」

みんなもいいよな?と言った鉢屋三郎の言葉に異議なしと声が連なる。あれ?いつの間にそんな話になっていたんだろう。クラス中が一致団結をするとは…これは、もう、拒否なんて出来ない流れだ。マジかよ…とうなだれた竹谷になんともいたたまれなくなったが、今年の主役は君だよ!とエールを送っておいた。すぐ妬ましさに溢れる顔を向けてきたけど気づかないふりして爽やかにスルーしようね。

「大縄まで力仕事とかドンマイ!」

頼りにされてる証拠だし。竹谷らしいといえば竹谷らしい。その筋肉で是非ともクラスを引っ張って行ってほしい。あわよくば私の参加する競技の点数をカバーしてほしい。絶対低いから。


「これで七松先輩のクラスも怖くねえ!絶対勝つぞ竹谷!早速挑戦状でも叩き付けにいこうぜ!下剋上だ!!竹谷からの宣戦布告だー!」
「何言ってんだやめろおおおお」

何故かテンション上がりまくりの体育委員。上級生にライバル心を燃やしているのはどうしてかわからないけど。彼は今にも教室から飛び出しそうだ。…というかたった今飛び出した。竹谷が慌てて教室から姿を消した体育委員のあとを追いかけているのも、きっと彼を捕まえなければ竹谷の身が危ないだろうことは察した。
しかし…それを止めようとしない先生は愉快に笑っているんだが。いやでも廊下は走るなよーとは言ってるけど覇気がないんだよね。あれ絶対止める気ないよね。


「…まあ下剋上はともかく、俺達二組が学年一位になろうか」

ざわめいた教室内に鉢屋三郎の声がすれば、わっとクラスから歓声が上がった。一組に負けないとか優勝だとか…なんだか各々活気づいているのは何故でしょう。

なんだろう。このクラス色んな意味ですごい気がするんだけど…



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